WCAG 2.0、2.1、2.2は、後の版が前の版に達成基準を加える形で発展してきました。WCAG 2.1ではモバイル利用、弱視、認知および学習上の困難への対応が補われ、WCAG 2.2ではキーボードフォーカス、ポインター操作、入力、認証に関する要件が増えています。
新しく対応方針を決めるなら、W3Cが採用を勧めるWCAG 2.2を基準にしつつ、契約、調達仕様、組織内の方針で指定された版も確認するのが現実的です。ウェブアクセシビリティそのものから整理したい場合は、ウェブアクセシビリティとWCAGの基礎もあわせて確認してください。
WCAG 2.0、2.1、2.2の違いを一覧で比較
WCAGは、Web Content Accessibility Guidelinesの略称です。ウェブページやウェブアプリの情報と機能を、障害のある人を含む多様な利用者が使えるようにするための技術標準です。以下では、英語のSuccess Criterionを「達成基準」と表記します。
| 版 | 発行年 | 達成基準数 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| WCAG 2.0 | 2008年 | 61 | 4原則、達成基準、適合レベルという共通の枠組みを整備 |
| WCAG 2.1 | 2018年 | 78 | 2.0に17項目を追加し、モバイル利用、弱視、認知および学習上の困難への配慮を拡充 |
| WCAG 2.2 | 2023年 | 86 | 2.1に9項目を追加し、4.1.1 Parsingを削除。フォーカス、ポインター操作、入力、認証を強化 |
WCAG 2.2が公開されたからといって、WCAG 2.0や2.1が無効になったわけではありません。3つはいずれも既存の標準であり、W3Cは後の版を前の版と後方互換になるよう設計しています。版の位置づけはW3CのWCAG 2概要で確認できます。
比較の前に知っておきたい4原則と適合レベル
版が変わっても、WCAG 2系列の土台は共通しています。達成基準は、次の4原則の下に整理されています。
- 知覚可能:情報を視覚や聴覚など一つの感覚だけに依存させない。画像の代替テキストや動画の字幕が代表例です。
- 操作可能:マウス以外の方法でも操作でき、利用者が現在位置を把握できるようにする。キーボード操作やフォーカス表示が該当します。
- 理解可能:内容と操作をわかりやすくし、入力ミスを防ぎ、修正しやすくする。一貫したナビゲーションや明確な入力ラベルが例です。
- 堅牢:ブラウザや支援技術が情報の構造、名前、役割、状態を解釈できるようにする。
各達成基準にはA、AA、AAAの適合レベルがあります。Aは基礎的な要件、AAはより広い利用上の障壁に対応する要件、AAAはさらに高い水準の要件です。AA適合を示すには、AとAAの対象となる達成基準を満たす必要があります。レベル名だけで難易度を判断せず、対象ページ、利用技術、例外条件を含めて個々の基準を確認します。
WCAG 2.0が整えた共通の土台
WCAG 2.0は2008年にW3C勧告として発行されました。特定のHTML要素だけを並べた規則ではなく、利用者が情報を知覚し、操作し、理解でき、支援技術を含む利用環境で解釈できるかを達成基準で評価します。
WCAG 2.0で実務の共通言語になったのは、次の3点です。
- 知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢という4原則
- 判定可能な61の達成基準
- A、AA、AAAという3段階の適合レベル
代替テキスト、字幕、キーボード操作、見出し構造、フォームのラベルといった現在も欠かせない確認事項は、この土台に含まれます。後の版に取り組む場合も、2.0の項目を飛ばして追加分だけを確認することはできません。
WCAG 2.1で追加された17項目
WCAG 2.1は2018年に発行され、WCAG 2.0へ17の達成基準を追加しました。主な対象は、モバイル端末での利用、弱視のある人、認知および学習に困難のある人です。小さな画面、拡大表示、タッチ操作といった利用場面を、達成基準として具体的に評価しやすくなりました。
| 達成基準 | レベル | 平易な説明 | 確認例 |
|---|---|---|---|
| 1.3.4 Orientation | AA | 表示方向が本質的でない限り、縦向きか横向きの一方だけに固定しない | 端末を回転できない状態でも内容と機能を利用できるか |
| 1.4.10 Reflow | AA | 拡大時にも情報や機能を失わず、原則として二方向のスクロールを求めない | 幅320 CSSピクセル相当で文章を横へ往復せず読めるか |
| 2.5.1 Pointer Gestures | A | 複数点や軌跡に依存する操作に、単純なポインター操作による代替を用意する | ピンチや複雑なスワイプ以外の方法で同じ機能を使えるか |
「モバイル対応済み」と「モバイルでアクセシブル」は同義ではありません。画面幅に収まるだけでなく、拡大、表示方向、タッチ操作、入力時の挙動まで確認します。具体的な点検方法はモバイルアクセシビリティとレスポンシブ設計の実践方法で詳しく解説しています。17項目の一覧はW3CのWCAG 2.1追加項目を参照してください。
WCAG 2.2で追加された9項目
WCAG 2.2は2023年10月にW3C勧告として発行されました。WCAG 2.1に9つの達成基準を追加し、とくに認知および学習上の困難、運動障害、弱視のある人が操作しやすいように要件を補っています。
| 達成基準 | レベル | 実務での読み方 |
|---|---|---|
| 2.4.11 Focus Not Obscured (Minimum) | AA | キーボードフォーカスを、固定ヘッダーなど作成者側のコンテンツで完全に隠さない |
| 2.4.12 Focus Not Obscured (Enhanced) | AAA | フォーカスを受けた部品の一部も、作成者側のコンテンツで隠さない |
| 2.4.13 Focus Appearance | AAA | フォーカスインジケーターに十分な大きさとコントラストを持たせる |
| 2.5.7 Dragging Movements | AA | ドラッグで行う機能に、ドラッグを伴わない単純なポインター操作の方法も用意する |
| 2.5.8 Target Size (Minimum) | AA | ボタンやリンクなどの操作対象に、十分な大きさまたは周囲との間隔を確保する |
| 3.2.6 Consistent Help | A | 複数ページで繰り返す問い合わせ先やヘルプを、一貫した相対順序で提示する |
| 3.3.7 Redundant Entry | A | 同じ手続きの中で、入力済みの情報を不必要に再入力させない |
| 3.3.8 Accessible Authentication (Minimum) | AA | 認証を記憶、計算、転記だけに依存させず、代替手段または入力を助ける仕組みを提供する |
| 3.3.9 Accessible Authentication (Enhanced) | AAA | 認知機能テストに関する例外をさらに限定し、認証時の認知的な負担を抑える |
たとえば、並べ替えをドラッグだけで行わせるのではなく、選択した項目を上下へ移動するボタンも用意します。画面下部の固定バナーがフォーカス中のボタンを覆う場合は、スクロール位置や固定領域の設計を見直します。入力と認証の設計は、WCAG 2.2で確認するフォームの入力支援とエラー設計も参考になります。9項目の原文と解説への入口はW3CのWCAG 2.2追加項目にまとまっています。
4.1.1 Parsingが削除された意味
WCAG 2.2では、WCAG 2.0と2.1にあった4.1.1 Parsingが廃止され、達成基準から削除されました。これは「HTMLの品質を確認しなくてよい」という意味ではありません。文書構造や部品の名前、役割、状態が利用者と支援技術に正しく伝わるかは、引き続き関連する達成基準と実際の利用環境で確認します。
また、契約や方針がWCAG 2.0または2.1への適合報告を明示している場合は、4.1.1を含む指定版の試験と報告が必要かを個別に確認してください。
どのバージョンを目標にすべきか
新規制作や改修で基準を選べるなら、WCAG 2.2を目標にする方法がわかりやすいでしょう。WCAG 2.2に適合するコンテンツは、後方互換の考え方によりWCAG 2.1と2.0にも適合します。ただし、適用される契約、調達条件、組織方針が特定の版を指定している場合は、その文言と報告方法を先に確認します。
既存サイトでは「2.1へ対応してから2.2へ進む」と機械的に二段階へ分ける必要はありません。現状を一度評価し、2.0から続く基礎項目、2.1の追加項目、2.2の追加項目を一つの改善計画に整理すると、重複作業を減らせます。
既存サイトをWCAG 2.2へ近づける確認手順
- 対象と目標を決める:対象ページ、利用者が完了すべき手続き、目標とする版と適合レベルを明記します。
- 利用頻度と影響で優先順位を付ける:ログイン、検索、購入、予約、問い合わせなど、利用を完了できないと影響が大きい導線から確認します。
- 基礎項目を点検する:見出し構造、代替テキスト、字幕、キーボード操作、フォーカス順序、フォームラベルを確認します。
- 2.1と2.2の差分を点検する:拡大とリフロー、表示方向、ポインター操作、フォーカスの隠れ、操作対象の大きさと間隔、再入力、認証を確認します。
- 自動検査と手動検査を組み合わせる:機械的に検出できる問題に加え、キーボードだけで手続きを完了できるか、拡大して読めるか、説明を理解できるかを人が確かめます。
- 修正後も継続して確認する:テンプレート、共通部品、コンテンツの更新時に問題が戻らないよう、担当と確認時期を決めて記録します。
適合確認は公開前の一回だけでは終わりません。運用体制、試験範囲、改善記録の整え方は、公開後も続けるWebアクセシビリティの試験と改善で整理しています。
WCAGの版を比べるときのよくある疑問
WCAG 2.1に対応していれば、WCAG 2.2にも適合しますか
適合するとは限りません。WCAG 2.2では9つの達成基準が追加されているため、その追加分を確認する必要があります。反対に、WCAG 2.2へ適合すれば、後方互換の考え方によりWCAG 2.1と2.0にも適合します。
自動チェックツールだけで適合を判断できますか
自動チェックだけでは判断できません。見出しやラベルの有無など検出しやすい項目がある一方で、操作順序、説明のわかりやすさ、代替手段が同じ目的を果たすかといった点は手動での確認が必要です。可能であれば、実際の利用者によるテストも組み合わせます。
WCAG 2.2を基準に継続して改善する
WCAG 2.0は4原則と適合評価の土台を築き、2.1はモバイル利用、弱視、認知および学習上の困難への配慮を広げました。2.2は、フォーカス、ドラッグ、操作対象、ヘルプ、再入力、認証をさらに具体化しています。
版の番号だけを追うのではなく、利用者が目的を完了できるかを起点に、基礎項目と追加項目を一つの計画で確認してください。公開後も更新のたびに再検証することで、基準への対応を実際の使いやすさにつなげられます。
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WCAGの版を比べても、自社サイトの課題が見えなければ改善は進みません。株式会社greedenは、UUUによるWebアクセシビリティ機能の導入とWebアクセシビリティチェックを通じ、取り組みの第一歩を支援します。
