JIS X 8341-3:2016の「読みやすさ」とは?6つの達成基準と実務対応

Green key with wheelchair icon on white laptop keyboard. Accessibility disability computer symbol

JIS X 8341-3:2016のガイドライン3.1「読みやすさ」は、文字を大きくすることだけを扱う基準ではありません。ページの言語を機械が判別できるようにし、専門用語、略語、難しい文章、読み方が分かりにくい語を利用者が理解できるようにするためのガイドラインです。

一方、文字と背景のコントラスト、文字の拡大、行の長さや行間は、主にガイドライン1.4「判別可能」で扱います。この区別を押さえると、試験項目と改善方法を対応させやすくなります。

ガイドライン3.1の「読みやすさ」が扱う範囲

ガイドライン3.1の目的は、テキストを目で追いやすくすることだけではなく、利用者と支援技術が内容を正しく読み、意味を理解できる状態にすることです。ページの主な言語が分からなければ、読み上げの発音や点字への変換が適切に行われないことがあります。専門用語の意味や略語の元の語が分からなければ、文章を読めても内容を理解できません。

「読みやすさ」と関連する主な確認領域
確認する内容 該当する主なガイドライン 確認の焦点
ページや一部分の言語 3.1 読みやすさ 言語をプログラムが解釈できるか
専門用語、略語、読解レベル、発音 3.1 読みやすさ 意味を理解するための情報があるか
文字と背景のコントラスト 1.4 判別可能 文字を視覚的に判別できるか
文字の拡大、行の長さ、行間 1.4 判別可能 表示を調整しても読めるか

「読みやすさ」を構成する6つの達成基準

ガイドライン3.1には、レベルAが1項目、レベルAAが1項目、レベルAAAが4項目あります。目標とする適合レベルによって必須となる項目は異なりますが、AAAの項目も、専門的な内容を一般向けに伝えるときの改善指針として役立ちます。

ガイドライン3.1の達成基準と実務対応
達成基準 レベル 求められる状態 実務での対応例
3.1.1 ページの言語 A ページの主な自然言語をプログラムが判別できる 日本語ページの html 要素に lang="ja" を指定する
3.1.2 一部分の言語 AA 本文中で言語が変わる一節や語句を判別できる 英語の引用文や文章に lang="en" を指定する
3.1.3 一般的ではない用語 AAA 専門用語や限定された意味で使う語の定義を確認できる 初出時に説明を添えるか、用語集へリンクする
3.1.4 略語 AAA 略語の元の語または意味を確認できる 初出時に正式名称と略語を併記する
3.1.5 読解レベル AAA 高度な読解力が必要な文章に補足または読みやすい版がある 要点、図解、平易な説明、別版を提供する
3.1.6 発音 AAA 発音が分からないと意味が曖昧になる語の読み方を確認できる 読み仮名や発音情報を本文中で提供する

ページ全体と一部分の言語を指定する

3.1.1ではページの主な言語を示す

日本語を主に使うページでは、HTMLの先頭を次のようにします。

<html lang="ja">

WordPressではサイトの言語設定やテーマがこの属性を出力することがあります。ただし、設定画面だけで判断せず、公開ページのHTMLで lang 属性を確認します。属性が欠けていたり実際の言語と異なっていたりすると、スクリーンリーダーの読み上げなどに影響する可能性があります。

3.1.2では本文中の言語の切り替わりを示す

日本語の文章に英語の文を引用する場合は、その範囲に言語を指定します。

<p><span lang="en">Web Content Accessibility Guidelines</span>は、ウェブアクセシビリティのガイドラインです。</p>

固有名詞、技術用語、周囲の文章で使われる言葉として定着した語などには例外があります。外国語に由来する単語を見つけるたびに機械的に属性を付けるのではなく、文章や引用など、実際に言語が切り替わる範囲を確認します。

専門用語と難しい文章を理解できる形にする

3.1.3から3.1.6は、言葉の意味を推測しにくい利用者にも内容が伝わるようにする達成基準です。実務では、次の順序で文章を点検すると対応漏れを減らせます。

  1. 専門用語を抽出する:対象読者が知らない可能性のある語には、初出時に短い定義を添えます。
  2. 略語を展開する:例えば「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」のように、元の語と略語の関係を示します。
  3. 長い文を整理する:一文に条件や例外を詰め込まず、見出し、段落、箇条書きで論点を分けます。
  4. 補足の形式を選ぶ:本文中の説明で足りなければ、用語集、要約、図解、平易な別版を用意します。
  5. 読み方を補う:発音が分からないと意味を特定できない固有名詞や語には、読み仮名を添えます。

文章そのものの整え方は、見出し、要約、やさしい日本語で読みにくい文章を整える方法も参考になります。

コントラストや文字サイズは別の達成基準で確認する

読みやすいページを作るには視覚的な調整も必要ですが、すべてをガイドライン3.1の要件として扱うと試験項目を取り違えます。

  • コントラスト:レベルAAの達成基準1.4.3では、通常の文字に4.5対1以上、大きな文字に3対1以上のコントラスト比を求めています。詳しい測定方法はコントラスト比の基準と確認方法で解説しています。
  • 文字の拡大:レベルAAの達成基準1.4.4では、文字を200%まで拡大しても内容や機能を失わないことを確認します。「本文は必ず16px以上」という一律の最小値ではありません。
  • 行の長さと行間:レベルAAAの達成基準1.4.8で扱います。元の記事にあった「1行60から70文字」という数値は、この達成基準の要件ではありません。

したがって、文章の理解しやすさと視覚的な読み取りやすさは、どちらか一方で代替できません。コンテンツの編集と表示の検証を別々の作業として実施し、最後に同じページで組み合わせて確認します。

公開前の実務チェック

  1. 目標とする適合レベルを決め、A、AA、AAAの項目を混同しない。
  2. 公開ページの html 要素で、主な言語が正しく指定されているか確認する。
  3. 別言語の文章や引用を探し、必要な範囲に lang 属性を付ける。
  4. 専門用語、略語、難しい表現、読み方が曖昧な語を洗い出し、必要な説明を加える。
  5. コントラスト、200%拡大、行の長さ、行間は、ガイドライン1.4の項目として別に検証する。
  6. 自動チェックだけで終えず、画面表示、キーボード操作、読み上げ、実際の文章理解を人が確認する。

ガイドライン3.1への対応は、文章を短くするだけの作業ではありません。言語、意味、読解レベル、発音の情報を必要な場所に用意し、利用者と支援技術のどちらにも内容が伝わる状態を作ることが目的です。


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投稿者 greeden

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