JIS X 8341-3:2016の「時間依存メディア」に対応するには、音声や動画へ一律に同じ代替を付けるのではなく、収録済みかライブか、音声だけか映像を含むかを先に見分けます。
そのうえで、音声を視覚で受け取れる字幕や文字起こしと、映像を聴覚やテキストで受け取れる音声解説やメディア代替を組み合わせます。
この記事では、媒体の分類、主な対応、公開前の確認手順を順に説明します。
時間依存メディアの意味
時間依存メディアとは、時間の経過に沿って情報が提示される音声や映像です。
ポッドキャストのような音声のみのコンテンツ、無音の映像、音声と映像が同期した動画、ライブ配信などが該当します。
ウェブページの文章とは異なり、利用者は話す順序や映像の変化に沿って内容を受け取ります。
そのため、音を聞けない場合や映像を見られない場合にも同等の情報へ到達できるよう、別の受け取り方を用意します。
字幕と文字起こしは役割が異なる
字幕(キャプション)は、発話や理解に必要な音を、動画やライブ配信の進行に同期させて表示するテキストです。
せりふだけでなく、話者を見分ける情報や、内容の理解に欠かせない効果音も対象になります。
文字起こしは、音声の内容を独立した文章として読める形にしたものです。
字幕は映像との同期が必要ですが、文字起こしは利用者が自分のペースで読めます。
音声解説とメディア代替が補う情報
音声解説は、登場人物の動き、画面にだけ表示される文字、場面の変化など、映像だけで伝えている情報を音声で説明する方法です。
メディア代替は、音声と映像から得られる情報をテキストなどで受け取れるようにしたものです。
短い要約だけでは元のコンテンツの目的や情報を十分に伝えられない場合があるため、利用者が必要な内容を把握できるかを基準に情報量を決めます。
コンテンツ種別ごとの主な対応
必要な対応は、媒体の種類と目標とする適合レベルによって異なります。
制作を始める前に、次の表でコンテンツを分類すると、字幕と代替情報の取り違えを防ぎやすくなります。
| コンテンツの種類 | 先に確認する対応 | 実装例 |
|---|---|---|
| 収録済みの音声のみ | 音声の情報を伝える代替 | 話者と必要な音の情報を含む文字起こし |
| 収録済みの映像のみ | 映像の情報を伝える代替 | 内容を説明するテキスト、または音声トラック |
| 収録済みの音声付き動画 | 音声に対する字幕と、映像に対する代替 | 同期字幕、音声解説、内容を伝えるテキスト |
| ライブの音声付き映像 | 進行に同期する字幕 | 字幕担当者や音声認識を利用したリアルタイム字幕 |
この表は作業の入口です。
実際の適合確認では、対象とする達成基準と適合レベルに照らして、必要な代替を個別に判断します。
収録済み動画の字幕を整える
収録済みの音声付き動画では、発話と重要な音声情報を同期字幕で伝えます。
- 字幕の表示時刻を音声に合わせる
- 話者が画面だけでは分からない場合は、話者名や区別できる表記を加える
- 警告音や笑い声など、理解に必要な音を記載する
- 一度に表示する文字量と表示時間を調整し、読み切れるか確認する
自動字幕は作業の出発点として使えますが、固有名詞、同音異義語、句読点、表示タイミングを人が確認します。
動画の掲載方法まで含めた確認事項は、アクセシブルな動画掲載のポイントでも解説しています。
映像の情報を音声解説で補う
音声解説では、映像を見なければ分からない情報のうち、内容の理解や操作に必要なものを説明します。
画面上の文章を登壇者がすべて読み上げている動画や、動作を音声で説明しながら進める実演では、追加すべき情報が少ないこともあります。
先に動画を音声だけで確認し、誰が何をしているのか、画面上の文字が何を示すのかを理解できるか調べると、不足を見つけやすくなります。
収録済み動画への具体的な提供方法は、音声解説(事前録画)の解説も参照してください。
ライブ配信の字幕を準備する
ライブ配信では、配信中の音声に合わせて字幕を提示します。
収録済み動画のように公開前の全編確認ができないため、担当者、字幕生成の方法、固有名詞の表記、障害発生時の連絡手順を事前に決めます。
- 登壇者名、専門用語、製品名を字幕担当者へ共有する
- 本番と同じ配信環境で、遅延と読みやすさを試す
- 自動認識を使う場合は、誤認識を監視して訂正できる体制を用意する
- 終了後に録画を公開する場合は、字幕を見直してから掲載する
達成基準と実装例を詳しく確認したい場合は、字幕(ライブ)の解説をご覧ください。
公開前と公開後の確認
字幕や音声解説を用意しても、内容が不正確だったり利用者が選択できなかったりすると、必要な情報は届きません。
公開前のチェック項目
- コンテンツを、収録済みかライブか、音声のみか映像を含むかで分類する
- 目標とする適合レベルと対象の達成基準を確認する
- 字幕、文字起こし、音声解説、メディア代替から必要なものを選ぶ
- 字幕の正確さ、同期、話者情報、重要な音の記載を確認する
- 音声だけでも、またはテキストだけでも、目的に必要な情報を理解できるか試す
- キーボードで再生、停止、音量、字幕の切り替えを操作できるか確認する
運用ルールに組み込む
時間依存メディアへの対応は、公開時だけの作業ではありません。
動画の差し替えや再編集を行ったときは、字幕、文字起こし、音声解説も同時に更新します。
可能であれば、実際に字幕や音声解説を利用する人の確認を受け、表示時間、読みやすさ、説明の不足を改善します。
時間依存メディア対応の要点
JIS X 8341-3:2016の時間依存メディア対応では、まずコンテンツの種類を分類し、失われる音声情報と映像情報を特定します。
その情報を字幕、文字起こし、音声解説、メディア代替で補い、公開前の品質確認と公開後の更新を続けます。
個々の機能を追加することよりも、利用者が元のコンテンツの目的に必要な情報へ到達できるかを確認することが、対応の判断基準になります。
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