Rayの脆弱性CVE-2025-62593が悪用対象に 開発環境を守る更新と認証の要点

分散処理クラスターを守る盾と遮断された不正通信を表した抽象イメージ

分散処理フレームワークRayの脆弱性CVE-2025-62593について、米国のサイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)が実環境での悪用を示す情報に基づき、既知悪用脆弱性カタログへ追加しました。

影響を受けるのはRay 2.52.0未満であり、開発者がSafariまたはFirefoxで悪意あるサイトを閲覧しただけでも、条件がそろえばローカル環境や社内ネットワーク上のRayに不正な処理を実行されるおそれがあります。

管理者はインターネット公開の有無だけで安全と判断せず、利用実態の確認、更新、トークン認証、通信制限、ログ調査を一続きの対応として進める必要があります。

既知悪用脆弱性に追加されたCVE-2025-62593

CISAの既知悪用脆弱性カタログは、CVE-2025-62593を8月17日付で追加し、米国連邦政府機関に8月20日までの対処を求めています。

この期限は米国連邦政府機関向けの要件ですが、一般の組織にとっても、理論上の危険だけでなく悪用情報を伴う脆弱性として優先順位を上げる根拠になります。

Rayプロジェクトのセキュリティアドバイザリによると、影響を受けるのは2.52.0未満で、修正版は2.52.0です。

同アドバイザリはCVSS v4.0で9.4(Critical)と評価し、機密性、完全性、可用性のいずれにも大きな影響があり得るとしています。

米国国立標準技術研究所のNVDも、影響バージョン、修正版、CISAによる既知悪用指定を確認できる情報をまとめています。

ブラウザーが社内のRayへ届く攻撃経路

DNSリバインディングは、ブラウザーが接続先として認識するIPアドレスを途中で変化させ、外部サイトからローカルホストや社内ネットワーク上のサービスへ要求を送らせる手法です。

今回の脆弱性では、Rayがブラウザー由来の要求をUser-Agentヘッダーで判定していたものの、SafariとFirefoxではこのヘッダーを変更できるため、防御として十分ではありませんでした。

  1. 開発者が2.52.0未満のRayを起動し、ダッシュボードやJobs APIが利用できる状態になります。
  2. 開発者がSafariまたはFirefoxで悪意あるサイトを開くか、不正広告を表示します。
  3. 攻撃者はDNSリバインディングを使い、ブラウザーを経由してRayのサービスへ要求を送ります。
  4. 要求がJobs APIへ届くと、Rayを実行している開発端末や隣接する環境で任意のシェルコマンドを動かされる可能性があります。

この経路ではブラウザーが外部と内部の間に立つため、Rayをインターネットへ直接公開していなくても対策が必要です。

なお、公式アドバイザリはChromeを同じ経路の影響対象としていませんが、ブラウザーの選択を恒久的な緩和策とみなすべきではなく、Ray本体の更新が先です。

観測された攻撃試行と侵害成功は分けて読む

BitsightのRondoDoxボットネット調査は、CVE-2025-62593を狙う通信をCVE公開前の2025年11月24日にハニーポットで初めて観測したと報告しています。

ただし、同社が観測したRondoDoxの要求はUser-Agentに「Mozilla」を含んでおり、Ray側の判定でHTTP 405が返されるため、その実装のままでは攻撃が成立しない可能性が高いと分析されています。

したがって、確認できる事実は「CISAが能動的な悪用情報に基づいて指定したこと」と「RondoDoxがこのCVEを狙う通信を送ったこと」であり、Bitsightの観測だけから同ボットネットによる侵害成功や被害規模までは断定できません。

攻撃試行に不備があったとしても、別の攻撃者が公式アドバイザリに沿った経路を使う可能性は残るため、更新を遅らせる理由にはなりません。

管理者が先に行う五つの対応

1.Rayの所在とバージョンを洗い出す

本番クラスターだけでなく、開発端末、検証用VM、Jupyter環境、コンテナイメージ、停止中のクラウド資産、CI環境を対象にRayの有無とバージョンを確認します。

依存関係ファイルに新しい版が記録されていても、起動中のプロセスや古いコンテナが更新前の版を使っていることがあるため、実行環境での確認が必要です。

2.2.52.0以降へ更新して再起動する

影響を受ける2.52.0未満から修正版以降へ更新し、コンテナやノードを再構築または再起動したうえで、稼働中の版が切り替わったことを確かめます。

互換性確認に時間がかかる場合は、対象をネットワークから隔離して利用を停止し、脆弱な版を稼働させたまま検証を続けない運用が安全です。

3.トークン認証を明示的に有効化する

Ray公式のトークン認証ガイドによると、認証機能は2.52.0以降で利用できますが、2.52.0では既定で無効です。

環境変数RAY_AUTH_MODE=tokenを設定してクラスターを起動し、共有トークンを全ノードと許可されたクライアントへ安全に配布します。

トークンはソースコードやバージョン管理へ入れず、共有環境ではアクセス権を制限したファイルで管理します。

4.ダッシュボードとAPIへの到達経路を絞る

Rayダッシュボードの標準ポート8265を含む管理用ポートを公開インターネットから遮断し、必要な担当者だけがSSHポートフォワーディング、VPN、踏み台などを介して接続できる構成にします。

Rayのトークンは暗号化されていないHTTPでは平文のヘッダーとして流れるため、遠隔接続ではTLSや暗号化されたトンネルを併用します。

5.不審なジョブと端末の挙動を調べる

更新前の環境が稼働していた場合は、Rayのジョブ履歴、ダッシュボードとAPIのアクセスログ、DNSログ、プロキシログ、未知の子プロセス、不審な外向き通信、見覚えのないファイル取得を確認します。

不正実行の兆候があれば、対象ホストを隔離し、認証情報やクラウド資格情報を保護したうえで、組織のインシデント対応手順に沿って調査範囲を広げます。

優先度 対象 完了の目安
最優先 2.52.0未満のRay 修正版へ更新し、実行中の版まで確認した
認証のないクラスター トークン認証を有効化し、秘密情報の保管方法を決めた
外部または広い社内ネットワークから届く管理ポート 接続元を限定し、暗号化経路へ切り替えた
更新前に稼働していた端末やノード ジョブ、プロセス、DNS、外向き通信を調査した

編集部の見解

今回の事例が示すのは、開発環境を「社内にある一時的な道具」として資産管理の外へ置く危うさです。

開発者のブラウザーを経由して内部サービスへ届く以上、公開範囲の確認だけでなく、依存関係の更新、管理APIの認証、通信経路、ログ保存を設計時から一組にすることが、開発速度と安全性の両立につながります。

修正版でトークン認証が選べるようになったことは前進であり、今回の更新を単発の作業で終わらせず、開発用ミドルウェアを棚卸しする仕組みへ広げる機会にできます。

よくある質問

Rayをインターネットへ公開していなければ安全ですか

安全とは限りません。

今回の経路ではブラウザーがローカルまたは社内ネットワーク上のRayへ要求を運ぶため、非公開環境もバージョン確認と更新の対象です。

Chromeだけを使えば更新しなくてもよいですか

Chromeは公式アドバイザリが説明する経路の影響対象ではありませんが、ブラウザーの違いはRay本体の脆弱性を解消しません。

利用ブラウザーにかかわらず2.52.0以降へ更新し、認証と通信制限を整えます。

トークン認証を有効にすれば十分ですか

認証だけでは十分ではありません。

修正版への更新を前提に、トークンの安全な保管、TLSまたは暗号化トンネル、管理ポートの接続元制限、ログ確認を組み合わせます。

参考情報

この記事に関連する株式会社greedenの取り組み

開発環境の安全は、更新だけでなく構成と運用まで見直して保ちます。株式会社greedenは、要件定義から実装、テスト、保守運用まで一気通貫で支援し、セキュリティ要件に応じたWebシステム開発に取り組んでいます。

投稿者 greeden Inc.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)