ウェブアクセシビリティは、ウェブサイトやアプリを利用するときに生じる障壁を減らし、年齢や障がいの有無にかかわらず情報や機能を使えるようにする取り組みです。
ユニバーサルデザインは、年齢や能力などの違いを問わず、できるだけ幅広い人が使いやすい環境を設計する考え方です。
両者は競合するものではありません。ユニバーサルデザインで多くの人に使いやすい土台をつくり、ウェブアクセシビリティでデジタル利用時の具体的な障壁に対応すると、設計の意図と実際の使いやすさを結び付けられます。
ウェブアクセシビリティが解決する障壁
ウェブの利用は、買い物、仕事、学習、各種手続きなど、日常のさまざまな場面に広がっています。
しかし、画面を見なければ内容が分からない、音声を聞かなければ情報を得られない、マウスでなければ操作できないといった設計は、利用者によっては情報や機能へ進めない原因になります。
ウェブアクセシビリティは、このような利用上の障壁を具体的に見つけ、別の方法でも情報を受け取ったり操作したりできる状態を目指します。
- 見えない、見えにくい場合:スクリーンリーダーで内容を理解できるように、画像へ適切な代替テキストを付けます。
- 音声を聞き取れない、聞き取りにくい場合:動画の内容を文字でも受け取れるように字幕を用意します。
- マウスやタッチ操作が難しい場合:キーボードでも主要な機能を利用できるようにします。
- 複雑な情報を理解しにくい場合:見出し、説明、ナビゲーションを整理し、次に何をすればよいかを分かりやすくします。
- 一時的に操作や知覚が制限される場合:けがや周囲の環境によって普段の操作方法を使えないときも、代わりの手段が役立ちます。
これらは特定の利用者だけを想定した例外的な対応ではありません。情報を受け取る方法と操作する方法を複数用意することで、幅広い状況に対応しやすくなります。
ユニバーサルデザインが目指す使いやすさ
ユニバーサルデザインの対象はウェブに限りません。建築、製品、公共交通機関なども含め、できるだけ多くの人が無理なく利用できる形を、設計の初めから考えます。
自動ドア、エレベーター、音声案内のあるATMは、その考え方をイメージしやすい例です。特定の人にだけ便利なのではなく、荷物を持っている人や操作に不慣れな人を含め、多くの利用者を助けます。
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインは、次の7つの原則で整理できます。
- 公平性:利用者によって不利益が生じにくく、誰にとっても使いやすいこと。
- 自由度:利用者の状況に合わせて、複数の使い方を選べること。
- 簡単で直感的な使用:経験や知識に左右されにくく、使い方を理解しやすいこと。
- 認識しやすい情報:必要な情報を受け取りやすい形で示すこと。
- 失敗に対する寛容さ:誤操作が起きても、危険や不利益につながりにくいこと。
- 少ない身体的負担:無理な姿勢や強い力を必要とせず、楽に使えること。
- 適切なサイズと空間:体格や能力、使い方が異なっても、近づいたり操作したりできること。
ウェブでは、分かりやすいナビゲーションや単純な操作の流れを設計する際に、この考え方を生かせます。
二つの考え方はどこが違うのか
違いは、対象となる人を二つに分けることではなく、解決しようとする課題と適用範囲にあります。
| 比較項目 | ウェブアクセシビリティ | ユニバーサルデザイン |
|---|---|---|
| 中心となる課題 | ウェブやアプリの情報、機能を利用するときの障壁を減らす | できるだけ幅広い人が使いやすい環境を設計する |
| 主な適用範囲 | ウェブサイト、アプリ、デジタルコンテンツ | 建築、製品、ウェブ、交通など |
| ウェブでの例 | 代替テキスト、字幕、キーボード操作への対応 | 分かりやすいナビゲーション、簡単で直感的な操作 |
例えば、オンライン手続きの流れを分かりやすく整理するのは、幅広い人の使いやすさにつながる設計です。その手続きをキーボードやスクリーンリーダーでも完了できるようにすると、具体的な利用障壁にも対応できます。
WCAGの4原則を実践へつなげる
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、W3C(World Wide Web Consortium)が策定する、ウェブアクセシビリティの代表的な国際指針です。
個別の改善策をばらばらに考えるのではなく、次の4原則へ当てはめると、何を確認すべきか整理しやすくなります。
- 知覚可能(Perceivable):情報を一つの感覚だけに依存させません。画像の代替テキストや動画の字幕は、この原則に関係します。
- 操作可能(Operable):利用者が必要な機能を操作できるようにします。キーボードだけでも操作できる状態は、その代表例です。
- 理解可能(Understandable):内容と操作方法を理解しやすくします。見出しや案内を整理し、操作の流れを分かりやすくします。
- 堅牢(Robust):異なる技術や支援技術でも内容を扱えるようにし、環境が変わっても利用しやすい状態を目指します。
WCAGを基準に改善を進めるときは、WCAGの基礎と取り組み方も参照できます。
ウェブ制作で最初に確認したい項目
すべてを一度に見直すのが難しい場合は、情報の受け取り方と操作方法の両方から確認します。
- 内容を伝える画像に、目的に合った代替テキストがあるか。
- 音声を含む動画に、内容を文字で受け取れる字幕があるか。
- マウスを使わなくても、主要なリンクや機能を操作できるか。
- 見出しとナビゲーションから、ページの構成や現在地を理解できるか。
- 利用者が次に行う操作を、簡潔な説明から判断できるか。
画像の説明に迷う場合は、代替テキストの役割と書き方を先に確認すると、画像ごとの判断を整理できます。
公開前や改修後は、ウェブアクセシビリティチェックの進め方に沿って、実際に情報を受け取り、操作を完了できるかを確かめます。
使いやすさを設計し、利用時の障壁を確かめる
ユニバーサルデザインは、幅広い人の使いやすさを設計の初めから考えるための枠組みです。
ウェブアクセシビリティは、その設計がウェブ上で情報の取得や操作を妨げていないかを具体的に確かめ、改善するための取り組みです。
分かりやすい構成を整えるだけで終わらせず、代替テキスト、字幕、キーボード操作などの確認まで行うことで、より多くの人が利用できるウェブに近づきます。
