カナダのウェブアクセシビリティ制度:ACA、AODA、WCAGの関係

pensive man holding credit card and browsing smartphone on street in daytime
Photo by Anete Lusina on Pexels.com

ウェブアクセシビリティとは、障害や利用環境によって、ウェブ上の情報や機能を使えない状態が生じないように設計し、運用することです。

カナダでは、単一の法律がすべての組織とウェブサイトに同じ要件を課しているわけではありません。

連邦の管轄にはアクセシブル・カナダ法があり、各州にもそれぞれの法律や基準があります。

自社に必要な対応を判断するには、組織が連邦と州のどちらの管轄に属するか、どの州で事業を行うか、どのウェブコンテンツが対象かを分けて確認する必要があります。

この記事は制度の全体像を整理するための概説です。

個別の適用判断では、所管機関が公開する最新情報を確認してください。

ACA、AODA、WCAGの違い

三つの名称は同じ種類の制度を指すものではありません。

カナダのウェブアクセシビリティで確認する主な制度
名称 位置づけ 確認する点
ACA 連邦の管轄にある組織を対象とする法律 組織が連邦管轄に属するか
AODA オンタリオ州のアクセシビリティ法 組織の種類と規模、公開ウェブサイトやコンテンツの範囲
WCAG ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する技術標準 適用される版、適合レベル、例外

WCAGは法律そのものではありません。

法律や規則、行政機関の標準が特定の版と適合レベルを参照することで、実務上の要件になります。

連邦法のアクセシブル・カナダ法

アクセシブル・カナダ法(Accessible Canada Act、ACA)は2019年に施行されました。

目標は、連邦の管轄にある分野で障壁を特定し、取り除き、新たな障壁を防ぐことにより、2040年1月1日までにバリアフリーなカナダを実現することです。

対象には、カナダ政府の機関に加え、銀行、州境や国境を越える交通、放送、通信など、連邦政府が規制する民間部門が含まれます。

したがって、「カナダで事業を行うすべての企業がACAの直接の対象になる」という意味ではありません。

ACAで求められる継続的な取り組み

ACAは、情報通信技術を含む複数の分野を対象にしています。

対象組織には、アクセシビリティ計画の作成と公開、意見を受け付ける仕組み、進捗報告などが求められます。

  • 計画:組織内の障壁をどのように特定し、除去し、予防するかを示します。
  • 意見の受付:利用者や従業員からアクセシビリティに関する意見を受け取れるようにします。
  • 進捗報告:計画に対して何を実施したかを継続的に示します。

一方、ACAという名称だけから、すべてのウェブサイトに同じWCAGの版が一律に適用されると判断することはできません。

組織の業種と所管機関、適用される規則や標準まで確認する必要があります。

オンタリオ州のAODA

障害者向けオンタリオ州アクセシビリティ法(Accessibility for Ontarians with Disabilities Act、AODA)は2005年に制定されました。

オンタリオ州では、指定公共部門の組織と、従業員50人以上の企業および非営利団体について、公開ウェブサイトと一定のウェブコンテンツにアクセシビリティ要件があります。

対象となる公開ウェブサイトと、2012年1月1日以降に公開されたウェブコンテンツは、原則としてWCAG 2.0のレベルAAに適合する必要がありますが、一部の達成基準には例外があります。

この要件は2021年1月1日から適用されています。

ただし、「オンタリオ州内のすべての事業者が、保有するすべてのウェブコンテンツを同じ条件で改修する」という規定ではありません。

公開サイトか組織内サイトか、コンテンツの公開時期、ウェブサイトを管理できる立場にあるかなどで扱いが変わります。

州ごとに異なる制度

オンタリオ州以外でも、州ごとのアクセシビリティ制度や公共機関向けの標準があります。

たとえば、ケベック州では公共機関を対象とするウェブアクセシビリティ標準が運用されていますが、対象組織や参照するWCAGの版はオンタリオ州と同一ではありません。

カナダ全体を対象にサービスを提供する組織は、連邦法だけ、または一つの州法だけを確認して終えるのではなく、事業地域ごとに適用関係を整理する必要があります。

WCAGが示すアクセシビリティ

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、W3Cが策定するウェブコンテンツのアクセシビリティに関する国際的な技術標準です。

WCAG 2にはA、AA、AAAの三つの適合レベルがあります。

法令や行政標準への対応では、「最新版ならよい」と決めつけず、指定された版とレベルを確認します。

WCAG 2の四つの原則と実装例
原則 意味 実装例
知覚可能 情報を利用者が認識できる形で提供する 画像の代替テキスト、動画の字幕、読みやすい文字と背景のコントラスト
操作可能 さまざまな入力方法で機能を使えるようにする キーボード操作、現在位置が分かるフォーカス表示
理解可能 内容と操作を分かりやすくする 具体的な見出し、入力欄のラベル、修正方法が分かるエラー表示
堅牢 ブラウザーや支援技術が内容を解釈できるようにする 見出しやボタンの役割を適切なHTMLで示す

適合は、チェックツールで警告が出ないことだけでは判断できません。

自動検査に加え、キーボード操作、画面読み上げ、拡大表示、実際の利用手順などを人が確認する必要があります。

確認方法を選ぶ際は、ウェブアクセシビリティチェックツールの使い分けも参考になります。

適用範囲を確認する手順

  1. 管轄を確認する:連邦の規制対象か、州の規制対象かを整理します。
  2. 組織の条件を確認する:公共部門か民間部門か、従業員数などの条件を確認します。
  3. 対象コンテンツを分ける:公開サイト、組織内サイト、文書、動画、アプリケーションを分けます。
  4. 基準を特定する:WCAGの版、適合レベル、対象外となる達成基準やコンテンツを確認します。
  5. 運用を記録する:検査結果、修正、利用者からの意見、継続対応を記録します。

この順序なら、法律名だけを見て対応範囲を広く捉えすぎることも、対象外だと早合点することも避けやすくなります。

法令対応にとどまらない運用

ウェブアクセシビリティは、公開時に一度検査すれば完了する作業ではありません。

コンテンツの追加、機能の改修、外部サービスの導入によって、新しい障壁が生じることがあるためです。

担当者を決め、更新時の確認項目と利用者からの意見を受け付ける窓口を整えると、問題を継続して把握しやすくなります。

アクセシブルな設計は、多様な利用者の操作や理解を助けます。

ただし、WCAGへの適合だけで検索順位やブランド評価の向上が保証されるわけではありません。

法令対応と使いやすさ、情報の分かりやすさは、別々に検証する必要があります。

カナダでの対応を判断する要点

  • カナダのウェブアクセシビリティ要件は、連邦と州で対象が異なります。
  • ACAは連邦管轄の障壁を取り除く枠組みで、目標年は2040年です。
  • オンタリオ州のAODAには、組織の種類と規模に応じた公開ウェブサイトの要件があります。
  • WCAGは技術標準であり、適用される版とレベルは法令や行政標準ごとに確認します。
  • 適合確認では、自動検査と人による操作確認を組み合わせます。

アクセシビリティ改善を始めるには

当社では、ウェブサイトの利用を支援するUUU ウェブアクセシビリティウィジェットツールを提供しています。

導入方法や機能に関心がある方は、サービスページで詳細をご確認ください。

なお、法令やWCAGへの適合は、ウィジェットの導入だけで決まるものではありません。

サイト全体の設計、コンテンツ、操作、検証体制を含めて判断する必要があります。

投稿者 greeden

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)