開発手法は「1つを選ぶ」だけではない
システム開発の進め方は、プロジェクトの目的、変更の多さ、リスク、チーム体制によって向き不向きが変わります。
ウォーターフォール、アジャイル、プロトタイピング、スパイラル開発、DevOpsにはそれぞれ強みがありますが、現場では1つの手法だけで全工程を進めるより、工程や領域ごとに組み合わせたほうが扱いやすい場合があります。
大切なのは、流行している手法をそのまま採用することではありません。
「最初に固めるべき部分」と「作りながら調整すべき部分」を分け、プロジェクトに合う進め方を設計することです。
まず押さえたい主な開発手法
組み合わせを考える前に、それぞれの手法が何を得意としているのかを整理しておくと判断しやすくなります。
| 手法 | 得意なこと | 注意したいこと |
|---|---|---|
| ウォーターフォール開発 | 要件定義、設計、開発、テストを順番に進め、全体計画を立てやすい。 | 途中で大きな変更が入ると、手戻りが大きくなりやすい。 |
| アジャイル開発 | 小さく作って確認し、フィードバックを反映しながら改善しやすい。 | 目的や優先順位が曖昧なままだと、開発の方向がぶれやすい。 |
| プロトタイピング開発 | 試作品を通じて、画面、操作感、要件の認識違いを早めに見つけやすい。 | 試作品をそのまま本番品質と誤解すると、後工程で調整が必要になる。 |
| スパイラル開発 | リスクを評価しながら、試作と改善を段階的に進めやすい。 | 繰り返しの範囲や終了条件を決めないと、管理が複雑になりやすい。 |
| DevOps | 開発と運用を連携させ、テストやリリースを継続的に改善しやすい。 | ツールだけでなく、チーム間の連携や運用ルールの整備が必要になる。 |
組み合わせを考えるときの判断軸
複数の開発手法を組み合わせるときは、先に判断軸を決めておくと、方法論だけが先行する状態を避けやすくなります。
- 要件の確定度: 最初から要件を固められるのか、使いながら調整する必要があるのか。
- 変更の多さ: 仕様変更、UI改善、ユーザー要望がどの程度発生しそうか。
- リスクの高さ: 新技術、外部連携、セキュリティ要件など、不確実な要素がどこにあるか。
- リリース頻度: 一度に大きく公開するのか、段階的に改善し続けるのか。
- チーム体制: 開発、運用、業務担当者がどの程度密に連携できるか。
この判断軸を置いたうえで、工程ごとに合う手法を割り当てると、組み合わせの目的が明確になります。
開発手法の組み合わせ例
ここからは、代表的な組み合わせと向いている場面を整理します。
どの組み合わせも万能ではないため、メリットだけでなく、管理上の注意点もあわせて確認することが重要です。
ウォーターフォール開発 × アジャイル開発
ウォーターフォール開発の計画性と、アジャイル開発の柔軟性を組み合わせる方法です。
全体方針や基本設計は先に固め、変更が起こりやすい画面や機能は小さな単位で確認しながら進めます。
向いている場面
- 全体のスケジュールや予算を先に見通したい。
- 基幹部分は慎重に設計しつつ、UIや一部機能は改善しながら作りたい。
- 関係者が多く、合意形成と柔軟な調整の両方が必要になる。
進め方の例
- 要件定義と基本設計はウォーターフォールで整理する。
- 詳細設計や画面単位の実装はアジャイルで進め、短い間隔で確認する。
- 変更管理を明確にし、計画全体への影響を定期的に見直す。
この組み合わせでは、計画と変更対応の境界を曖昧にしないことが大切です。
「どこまでは固定し、どこからは改善対象にするのか」を先に決めておくと、管理しやすくなります。
プロトタイピング開発 × アジャイル開発
プロトタイピングで初期の試作品を作り、その後アジャイルで改善を重ねる方法です。
文章だけでは伝わりにくい画面の使い勝手や操作の流れを、早い段階で確認できます。
向いている場面
- 新規サービスや新しい業務画面を作る。
- ユーザーの使いやすさが成果に直結する。
- 関係者の認識を、実際に見える形でそろえたい。
進め方の例
- プロトタイプで画面構成、操作の流れ、必要な機能を確認する。
- アジャイル開発で優先度の高い機能から順に実装する。
- フィードバックを次の改善項目に反映し、作る範囲を調整する。
注意点は、試作品と本番システムの役割を分けることです。
プロトタイプは認識合わせには有効ですが、そのまま本番品質になるとは限りません。
性能、保守性、セキュリティなどは、実装段階で改めて設計する必要があります。
スパイラル開発 × ウォーターフォール開発
スパイラル開発のリスク管理と、ウォーターフォール開発の計画性を組み合わせる方法です。
不確実性が高い部分は試作と評価を繰り返し、仕様が見えている部分は計画的に進めます。
向いている場面
- 新技術や未経験領域が一部に含まれている。
- 既存システムの一部を更新する。
- 全体を止めずに、リスクの高い部分だけを重点的に検証したい。
進め方の例
- 高リスク領域はスパイラル開発で評価と改善を繰り返す。
- 既知の技術や安定した機能はウォーターフォールで計画的に進める。
- 評価結果を全体計画に反映し、次の工程で扱う範囲を決める。
この進め方では、検証サイクルの目的と終了条件を明確にしておく必要があります。
何を確認できれば次へ進むのかが曖昧だと、検証が長引き、全体の統制が難しくなります。
DevOps × アジャイル開発
アジャイル開発で小さく改善し、DevOpsの考え方でテスト、リリース、運用までつなげる方法です。
開発と運用を分断せず、変更を安全に届ける仕組みを整えることが目的です。
向いている場面
- Webサービスやクラウドアプリケーションを継続的に改善する。
- リリース頻度が高い。
- 開発後の運用、監視、改善まで含めて品質を高めたい。
進め方の例
- アジャイル開発で小さな変更単位を継続的に作る。
- CI/CDを活用し、テストやデプロイの手作業を減らす。
- 運用で得た情報を改善項目として開発に戻す。
DevOpsは、ツールを導入するだけで成立するものではありません。
開発チームと運用チームが、リリース基準、障害対応、監視項目、改善の優先順位を共有しておくことが重要です。
スパイラル開発 × DevOps
スパイラル開発でリスクを評価しながら改善し、DevOpsでテストやリリースを継続しやすくする方法です。
リスクを確認しながら段階的に進化させる長期プロジェクトに向いています。
向いている場面
- セキュリティや安定性を慎重に確認しながら機能を追加したい。
- 段階的に機能を拡張する長期プロジェクトである。
- 改善サイクルとリリース作業を分離せず、継続的に回したい。
進め方の例
- スパイラル開発でリスク評価、試作、改善を繰り返す。
- DevOpsでテスト、デプロイ、運用確認を自動化・標準化する。
- 各サイクルの結果を次の改善計画に反映する。
この組み合わせでは、プロセスが複雑になりやすい点に注意が必要です。
担当範囲、承認の流れ、リリース判断を明確にしておくと、品質とスピードの両立につながります。
組み合わせで失敗しないためのポイント
開発手法を組み合わせると、柔軟性は高まります。
一方で、役割分担や判断基準が曖昧なままだと、手法同士の良さを活かせません。
- 組み合わせる理由を明確にする: 何の課題を解決するために複数の手法を使うのかを共有します。
- 工程ごとの進め方を決める: 要件定義、設計、実装、テスト、運用でどの手法を使うかを分けます。
- 変更管理のルールを置く: 変更を歓迎する部分と、影響確認が必要な部分を分けます。
- チーム間の連携方法を決める: 会議体、レビュー、承認、情報共有の場を整えます。
- ツールと環境を先に確認する: チケット管理、ソース管理、CI/CD、テスト環境などを実際の進め方に合わせます。
開発手法の組み合わせは、手法名の掛け合わせではなく、プロジェクトを進めやすくするための設計です。
現場で判断に迷ったときは、「どのリスクを減らしたいのか」「どの変更に対応したいのか」に立ち戻ると整理しやすくなります。
まとめ
開発手法を組み合わせることで、計画性、柔軟性、リスク管理、継続的な改善をバランスよく取り入れやすくなります。
ただし、組み合わせれば必ず成功するわけではありません。
プロジェクトの性質、変更の多さ、チーム体制、運用までの流れを見たうえで、必要な手法を必要な範囲に使うことが重要です。
- 要件が固まりやすい部分は、計画的に進める。
- 変更が多い部分は、小さく作って確認する。
- リスクが高い部分は、試作と評価を繰り返す。
- 継続的に改善する部分は、運用やリリースの仕組みまで整える。
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