OpenAIは2026年6月3日、Agent BuilderとEvalsプラットフォームの提供終了予定を発表しました。2026年9月5日時点では、Agent Builderは11月30日に終了予定です。Evalsは10月31日に既存評価が読み取り専用となり、ダッシュボードとAPIは11月30日に終了予定です。一方、ChatKitは継続します。期限は変更される可能性があるため、作業前にOpenAIの廃止予定一覧を確認してください。
そのため、現在の判断は「Agent Builderで新しく作るか」よりも、「既存ワークフローを何へ移し、同じ動作をどう検証するか」が中心です。この記事では、2025年の発表内容を短く振り返ったうえで、既存利用者が移行時に確認すべき項目を順番に整理します。
AgentKitとは何だったのか
AgentKitは単一のSDKではなく、OpenAIが2025年10月に発表した、エージェントの設計、組み込み、評価、改善を支える一群のツールです。発表時点では、視覚的にワークフローを組むAgent Builder、会話画面を製品へ組み込むChatKit、接続先を管理するConnector Registry、データセットやトレース採点を扱うEvalsなどが紹介されました。
当時の全体像は、2025年10月6日のOpenAI発表を整理した記事でも確認できます。ただし、現在は構成要素ごとに提供方針が分かれています。「AgentKitが使えるか」という一問ではなく、利用中の機能を一つずつ確認する必要があります。
現在の提供状況
| 機能 | 現在の位置づけ | 利用者が確認すること |
|---|---|---|
| Agent Builder | 廃止予定。2026年11月30日に終了予定 | 既存ワークフローの書き出しと移行先の決定 |
| Evalsプラットフォーム | 廃止予定。10月31日に既存評価が読み取り専用となり、11月30日にダッシュボードとAPIが終了予定 | 評価ケース、採点基準、結果履歴の退避と代替評価環境の準備 |
| ChatKit | 継続 | Agent Builderのホスト型ワークフローに依存している場合は、独自のサーバー側実装へ接続し直す |
| Agents SDK | コードで構築する移行先 | 書き出したコードを自社の実行環境で設定し、挙動を再検証する |
| ChatGPT Workspace Agents | 自然言語で構築し、チームで共有する移行先 | アプリへ組み込む必要があるか、チーム内利用で足りるかを判断する |
提供状況の根拠は、更新されたAgentKit発表ページとAgent Builderの現行ドキュメントです。特にEvalsはAgent Builderと日程が一部異なるため、同じ締切だと考えないほうが安全です。
移行先は用途で選ぶ
製品や業務システムへ組み込むならAgents SDK
Agents SDKは、エージェント、ツール、処理の分岐をコードとして実装するための選択肢です。自社のアプリケーションで動かし、認証、データ接続、承認処理、監視を実装したい場合に向きます。OpenAIの移行ガイドでは、Agent Builderの画面からTypeScriptまたはPythonのコードを書き出し、Agents SDKで継続する手順が案内されています。
ただし、書き出しはワークフロー図をそのまま変換する機能ではなく、すべての動作を同じ状態で引き継ぐ保証もありません。接続先、環境変数、認証、例外処理、人の承認条件を見直し、移行前と同じテストケースで比較する必要があります。
チーム内で使うならWorkspace Agents
ChatGPT Workspace Agentsは、自然言語でエージェントを構築し、チームで共有する用途に向く移行先として案内されています。独自アプリへの埋め込みや細かな実行制御が必要ならAgents SDK、ChatGPT内での共同利用が目的ならWorkspace Agentsという切り分けが出発点になります。
会話画面を残すならChatKit
ChatKitは提供が継続されます。既存の画面を捨てる必要はありません。ただし、Agent Builderがホストするワークフローへ接続している構成は移行対象です。新規構築や移行では、ChatKitの現行ガイドが案内する独自サーバー連携を使い、サーバー側のエージェント実装へ接続します。
移行を進める6つの手順
- 利用箇所を棚卸しする
ワークフローID、公開中の版、接続ツール、データの入出力、ChatKitとの接続、Evalsの評価セットを一覧にします。止まったときに影響する業務と担当者も対応づけます。 - 移行先を決める
アプリへの組み込みとコード管理が必要ならAgents SDK、ChatGPT内のチーム利用が中心ならWorkspace Agentsを候補にします。ChatKitは画面、Agents SDKはサーバー側の処理というように、役割を分けて考えると判断しやすくなります。 - Agent Builderからコードを書き出す
対象ワークフローを開き、上部の「Code」からAgents SDKを選び、TypeScriptまたはPythonの完全な書き出しを取得します。書き出した時点の版と日時を記録し、その後の変更と混ざらないようにします。 - 接続と制約を再実装する
API認証、権限、タイムアウト、再試行、禁止操作、人への引き継ぎを確認します。画面上のノードがつながっているだけでは、本番環境の認証や障害時の処理まで再現されたとは限りません。 - 同じ評価ケースで差分を測る
代表的な正常系だけでなく、入力不足、権限不足、接続先エラー、危険な依頼も試します。回答の正確さだけでなく、正しいツールを選んだか、禁止操作を止めたか、人へ引き継いだかを確認します。 - 段階的に切り替える
検証環境で動かした後、一部の利用者や低リスク業務から切り替えます。旧構成を止める条件と切り戻す条件を先に決め、監視できる状態で移行します。
Evals終了前に残すもの
評価環境を変えても、これまでの改善材料は引き継げます。Evalsを利用している場合は、読み取り専用になる予定日の前に、次の情報を手元で再利用できる形に整理します。
- テスト入力と期待する結果
- 合否を判断する採点基準
- 人が付けた注釈と誤答の分類
- ツール呼び出しを含む実行記録
- 版ごとの結果と、合格とする基準
評価ケースは件数だけを増やすより、実際に困った失敗を残すほうが役立ちます。たとえば、配送状況を答えるエージェントなら、「注文番号がない」「他人の注文番号が入力された」「配送APIが応答しない」といった境界条件を分けます。これにより、回答文の自然さと、業務として安全に完了できるかを別々に判定できます。
実務で使える設計例
| 用途 | 接続する対象 | 人へ戻す条件 | 評価する項目 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ対応 | 社内ナレッジ、受注、配送 | 本人確認ができない、返金判断が必要、根拠を取得できない | 回答の正確さ、根拠の提示、引き継ぎの妥当性 |
| 調達と経費 | 商品台帳、見積、承認システム | 金額や品目が規程外、承認者が不明、発注直前 | 項目抽出、承認経路、重複起票、禁止操作 |
| 開発支援 | 課題管理、リポジトリ、CI | 本番変更、権限変更、テスト失敗、仕様が不明 | 課題と差分の対応、テスト結果、説明の再現性 |
この表は特定の製品機能を保証するものではなく、移行後にも残すべき業務要件の例です。ツールを替えても、誰が承認するか、どこで止めるか、何を合格とするかは消えません。生成AI導入全体の準備は、生成AIを業務に入れる前に決めるべきことでも整理しています。
安全性と運用で外せない確認
- 最小権限:エージェントへ渡す権限を、読む、作る、更新する、削除するに分け、必要な操作だけを許可します。
- 人の承認:支払い、返金、本番変更、アカウント停止など影響の大きい操作は、実行前に担当者が確認する設計にします。
- 入力データ:個人情報や機密情報を扱う範囲、保存先、保持期間を決めます。
- 攻撃への備え:外部文書やWebページに含まれる指示をそのまま実行しないよう、プロンプトインジェクションとデータ漏えいをテストします。
- 観測:最終回答だけでなく、選んだツール、エラー、人への引き継ぎを追える記録を残します。
よくある質問
AgentKitそのものが11月30日にすべて使えなくなるのですか
すべての構成要素が同時に終了するわけではありません。Agent BuilderとEvalsプラットフォームは終了予定ですが、ChatKitは継続します。利用中の機能名と接続関係を分けて確認してください。
Agent Builderから書き出せば、そのまま移行できますか
そのまま同じ動作になる保証はありません。公式の移行ガイドも、書き出しがワークフロー図を変換するものではなく、すべての挙動を変わらず移す保証はないと説明しています。接続設定と例外処理を整え、回帰テストを行います。
ChatKitを使っている画面も作り直す必要がありますか
ChatKit自体は継続します。ただし、背後でAgent Builderのホスト型ワークフローを利用している場合は、独自のサーバー側実装へ接続し直す必要があります。
移行時にRFTを行うべきですか
最初に確認するのは、移行前の動作を再現できるかです。強化学習による微調整は別の改善手段であり、接続、権限、停止条件、評価ケースの再構築を代替しません。まず回帰テストを通し、その後に必要性を判断します。
移行判断のまとめ
既存のAgent Builder利用者は、終了予定日から逆算してコードを書き出し、Agents SDKまたはWorkspace Agentsへ移す準備を始める段階です。Evals利用者は、より早い10月31日の読み取り専用化を意識し、評価資産を先に整理します。ChatKitは継続できますが、背後のAgent Builder依存は解消します。
移行で守るべきものは製品名ではなく、業務の完了条件、権限、人の承認、評価ケースです。この四点を先に固定すれば、移行先の技術を選びやすくなり、切り替え後の不具合も見つけやすくなります。
公式情報
この記事に関連する株式会社greedenの取り組み
AgentKitの移行では、製品名に縛られず、業務フローと評価基準を整理し直す必要があります。株式会社greedenは、生成AIを用いた施策について、ツール選定から業務フロー改善、システム実装、定着支援まで伴走します。
