コーポレートサイトのリニューアルは、配色やレイアウトを新しくするだけの仕事ではありません。
事業上の目的、残す情報、URLの扱い、利用しやすさ、公開後の責任を先に決めてこそ、新しいデザインが成果につながります。
この記事では、発注側と制作側が制作開始前から公開後まで共有したい七つの設計項目を、成果物と確認方法まで含めて整理します。
リニューアルの成否は制作前の合意で決まる
リニューアルで起きやすい混乱は、「新しく見えること」と「サイトの役割を改善すること」が同じ目標として扱われるところから始まります。
デザイン案への好みを議論する前に、誰が、どの情報を理解し、どの行動を迷わず完了できる状態を目指すのかを定めます。
たとえば採用サイトなら応募数だけでなく、募集要項の閲覧から応募完了までの到達率や、よくある質問で自己解決できた割合も候補になります。
問い合わせ獲得が目的なら、フォーム送信数に加え、対象外の問い合わせが減ったか、営業担当が必要な情報を受け取れたかも確認対象です。
1.目的を利用者の行動まで具体化する
最初の成果物は、抽象的な「ブランド向上」ではなく、利用者の判断と行動を結び付けた目的表です。
| 決める項目 | 記載例 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 主な利用者 | 導入候補企業の担当者 | 既存顧客への聞き取り、検索語、問い合わせ内容 |
| 解決する迷い | 自社の課題に対応できるか判断できない | 離脱ページ、営業時の質問、サイト内検索 |
| 期待する行動 | 事例を確認し、相談条件を理解して問い合わせる | 主要ページ到達率、フォーム完了率、問い合わせの適合度 |
| 公開後の責任者 | 情報更新は広報、計測確認は事業責任者 | 月次の更新記録と指標レビュー |
この表があれば、ファーストビューのコピー、事例の並び順、問い合わせ導線を「好み」ではなく目的への寄与で比較できます。
2.全コンテンツを残す、統合する、廃止する、新設するに分ける
既存ページの棚卸しでは、URL、ページ名、担当部署、最終更新日、閲覧状況、外部リンクの有無を一覧にします。
判断はアクセス数だけに任せません。
閲覧が少なくても、契約条件、採用情報、サポート、会社の信頼確認に必要なページは残す理由があります。
反対に、検索流入があっても内容が重複し、読者が次の行動を選べないページは、統合して説明を厚くする方が適切な場合があります。
各ページに「維持」「改稿」「統合」「廃止」「新設」の判定と根拠を付けると、原稿制作とURL移行を同じ台帳で管理できます。
3.旧URLと新URLの対応表を納品物にする
URLを変える場合、ページ移行表はSEO担当者だけの補助資料ではなく、公開判定に使う正式な成果物です。
Google Search Centralのサイト移行ガイドは、旧URLの一覧作成、新URLとの対応付け、内部リンクとサイトマップの更新、恒久的なサーバー側リダイレクト、移行後の監視を案内しています。
内容の異なる旧ページを一律に新しいトップページへ転送すると、利用者は探していた情報にたどり着けず、検索側でもソフト404として扱われる可能性があります。
統合先があるページは最も近い新ページへ移し、代替先がない廃止ページは適切な404または410を返す方針を決めます。
URL移行表に必要な列
- 旧URLと新URL
- 判定理由とコンテンツ担当者
- 転送方法
- 新ページのcanonical
- 内部リンクの更新状況
- 公開後の応答確認
公開前には代表ページだけでなく、一覧全体を機械的に確認し、転送先、応答コード、リンク切れを記録します。
4.アクセシビリティを要件、制作、運用に分配する
アクセシビリティを公開直前の検査だけに置くと、ナビゲーション、配色、フォーム、CMSの選定に関わる問題を大きく作り直すことになります。
2026年8月に更新されたW3C WAIの計画・管理ガイドは、取り組みを「開始」「計画」「実施」「維持」の活動として示し、責任の割り当て、早期かつ定期的な評価、監視、利用者からの意見を継続して扱うよう案内しています。
デジタル庁のウェブアクセシビリティ導入ガイドブックも、技術者だけでなく、発注や受託に関わる担当者が共通理解を持つための資料として利用できます。
要件定義では適用範囲と目標を決め、デザインでは文字の読みやすさ、コントラスト、フォーカス表示、操作領域を確認します。
実装では見出し構造、キーボード操作、フォームのラベルとエラー通知を検証し、公開後は新しいページや更新原稿にも同じ基準を適用します。
工程別の確認項目は、関連記事「Webアクセシビリティを実務に組み込む方法」でも詳しく整理しています。
5.デザイン判断を再利用できるルールに変える
完成画面だけを納品すると、公開後にページを追加するたび、余白、見出し、ボタン、エラー表示の判断がやり直しになります。
色、文字、余白、画像比率、部品の状態、文章表記を小さな規則として残し、どのページで使うかと例外条件を添えます。
ボタンなら通常時だけでなく、マウスポインターを重ねた状態、キーボードフォーカス、押下中、無効、処理中まで定義します。
ただし、部品を増やすこと自体を目的にはしません。
よく使う要素から整え、追加や変更を誰が承認するかまで決めて初めて、デザインの一貫性を維持できます。
命名と変更管理の考え方は「Design Tokens 2025.10をデザインシステム運用へ生かす方法」も参考になります。
6.公開前の基準値と公開後の判定日を決める
改善を測るには、旧サイトの基準値を公開前に保存する必要があります。
問い合わせ完了率、主要ページへの到達率、サイト内検索語、404件数、検索流入、端末別の表示性能を、目的に合わせて選びます。
性能については、web.devのWeb Vitals解説が、現在のCore Web VitalsとしてLCP、INP、CLSを示し、モバイルとパソコンを分けた実利用データの75パーセンタイルで評価する考え方を説明しています。
計測タグが新旧サイトで同じ意味を持つかも確認します。
イベント名が変わったまま比較すると、画面は改善していても数字の差が設定変更によるものか判断できません。
公開直後、数日後、数週間後など確認日をあらかじめ決め、異常の検出と中期的な評価を分けます。
7.公開作業と日常運用の責任をつなぐ
公開判定には、表示確認、フォーム送信、メール受信、URL転送、計測、検索エンジン向け設定、バックアップと復旧手順を含めます。
同時に、ニュース、事例、採用情報、会社情報を誰がどの頻度で確認するかを決めます。
更新担当者には、CMSの操作方法だけでなく、見出しの順序、画像の代替テキスト、リンク文言、公開前確認の基準を共有します。
制作会社の保守範囲、社内担当者が直せる範囲、承認が必要な変更を分けておけば、軽微な修正が滞りにくくなります。
発注前に使える確認リスト
- サイトの目的を利用者の判断と行動で説明できる
- 全ページの維持、改稿、統合、廃止、新設を判定した
- 旧URLと新URLの対応表、転送方針、確認方法がある
- アクセシビリティの目標、範囲、担当者、検査時期を決めた
- 再利用するデザインルールと例外の扱いを決めた
- 旧サイトの基準値と公開後の評価指標を保存した
- 公開判定者、緊急連絡先、日常の更新責任者を決めた
見積もりを比べるときは、画面数や制作期間だけでなく、これらの成果物と確認作業が範囲に含まれるかを見ます。
よくある質問
デザイン案はいつ作り始めるべきですか
目的、主な利用者、主要な導線、コンテンツの優先順位が決まった段階で、骨格となるワイヤーフレームへ進みます。
すべての原稿完成を待つ必要はありませんが、実際の文字量や画像条件を無視した仮の内容だけで最終デザインを確定すると、実装時に崩れやすくなります。
URLは短くきれいに変えた方がよいですか
新しい命名規則に利点があっても、URL変更には転送、内部リンク、canonical、サイトマップ、計測の作業が伴います。
既存URLに重大な問題がなければ維持する選択も含め、得られる効果と移行リスクをページ単位で比べます。
公開後はどの数字を最初に見ればよいですか
最初はフォーム送信、主要導線、404、転送、計測欠落など、事業や利用者への影響が大きい異常を確認します。
検索流入や問い合わせ品質の傾向は短時間で確定しないため、公開前に決めた期間と基準値で評価します。
参照した一次情報
- Google Search Central「Site Moves and Migrations」
- W3C WAI「Planning and Managing Web Accessibility」
- デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
- web.dev「Web Vitals」
- 株式会社greeden公式サイト
この記事に関連する株式会社greedenの取り組み
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