Canvaは2024年3月に、画像編集、ベクター制作、ページレイアウトの各アプリを展開していたAffinityを買収しました。
その後、2025年10月に三つの制作領域を一つにまとめた新しいAffinityを発表し、基本の制作機能を無料で提供する方針を示しています。
この動きを単に「Adobe製品が不要になる」と捉えると、判断を誤ります。
Affinity、Canva、Adobe Creative Cloud、Figmaは重なる機能を持つ一方、得意とする工程が異なるからです。
この記事では、公式発表で確認できる事実と競争上の解釈を分け、どのような仕事で何を確認すべきかを整理します。
先に押さえたい三つの結論
- Canvaが公式に説明した買収の狙いは、プロのデザイナーを含む幅広い利用者へ対象を広げることです。
- 新しいAffinityの画像編集、ベクター制作、ページレイアウト機能は無料ですが、Affinity内で使うCanvaの一部の高度なAI機能には対象の有料プランが必要です。
- 移行の可否は利用料金だけでは決まりません。既存データの再現性、入稿要件、共同作業、開発者への引き渡しまで試して判断する必要があります。
CanvaがAffinityを買収した理由
公式説明はプロ向け制作領域の拡張
Canvaは買収発表で、従来はデザインの専門教育を受けていない利用者を主に支援してきた一方、今後はプロのデザイナーも含む幅広い層を支援したいと説明しました。
Affinityには、写真の補正や合成、ベクター画像の作成、冊子などのページレイアウトを扱う制作機能があります。
CanvaがAffinityを迎えた直接の意味は、テンプレートを使った日常的な制作に加えて、細かな調整を必要とする工程まで製品群を広げたことにあります。
Adobeとの競争は買収の結果として強まる
Affinity Designer、Photo、Publisherは、Illustrator、Photoshop、InDesignと用途が重なるため、買収によってCanvaとAdobeの競争範囲は広がりました。
ただし、Canvaは買収理由を「Adobeを置き換えるため」と公式に説明したわけではありません。
Adobeとの対抗関係は市場への影響を読むための解釈であり、買収目的そのものと分けて考えるのが適切です。
Affinityの無料化は何を意味するのか
無料なのは統合された制作アプリ
2025年10月に発表された新しいAffinityは、従来別々だったVector、Pixel、Layoutの作業を一つのアプリで扱える構成です。
Canvaはこのアプリについて、すべての利用者に無料で提供し続ける方針を掲げています。
利用にはCanvaアカウントが必要ですが、新規利用者は無料アカウントを作成して有効化できます。
ここでの「無料」は、接続するすべてのサービスまで無条件で無料になるという意味ではありません。
Canva AI Studioを通じてAffinity内で使う生成塗りつぶし、背景拡張などの高度な機能は、Canvaの対象となる有料プランに含まれます。
無料の範囲と有料機能を分けて確認することが、導入後の行き違いを防ぎます。
| 項目 | 位置づけ | 確認点 |
|---|---|---|
| Affinityの制作機能 | 画像編集、ベクター制作、ページレイアウトを一つのアプリで提供 | 無料提供の方針と、利用する端末の対応状況を公式ページで確認する |
| Affinity内のCanva AI機能 | 制作を補助する追加機能 | 利用できる機能と上限はCanvaの契約プランごとに確認する |
| Canvaへの書き出し | Affinityで作った成果物を共同作業、公開、展開へつなぐ導線 | 書き出した要素の再現性と、チームの権限設定を実データで試す |
フリーミアムという見方
フリーミアムとは、基本機能を無料で広く提供し、追加機能や組織向け機能を有料で提供する事業モデルです。
Affinityの無料化によって利用の入口を広げ、共同作業、ブランド運用、公開といった工程でCanvaとの接続を増やす構造は、このモデルで説明できます。
ただし、無料化による利用者増加や有料プランへの移行効果は将来の事業成果です。
現時点で確定した結果として扱うことはできません。
Affinity、Canva、Adobe、Figmaの役割
四つの製品を一列に並べて優劣を決めるより、制作工程のどこを担当させるかで比較すると違いが見えます。
| 製品 | 主な役割 | 向いている使い方 | 導入前の確認点 |
|---|---|---|---|
| Affinity | 画像編集、ベクター制作、ページレイアウト | 写真、ロゴ、イラスト、冊子などを細かく仕上げる | 既存ファイルの再現性、フォント、印刷データ、書き出し形式 |
| Canva | テンプレートを使った制作、共同作業、公開と展開 | 複数人でブランド素材を管理し、SNS画像や資料を継続的に作る | プラン別機能、権限、承認手順、Affinityからの受け渡し |
| Adobe Creative Cloud | 専門分野ごとの制作アプリを組み合わせたワークフロー | 既存のAdobe資産やプラグインを使い、複数の制作領域を連携させる | 取引先との互換性、入稿仕様、自動化、教育と契約の総費用 |
| Figma | Webやアプリの画面設計、プロトタイプ、開発者への引き渡し | 同じ設計データを見ながら、デザイナーと開発者が仕様を詰める | 席種、Dev Mode、デザインシステム、実装側との運用ルール |
FigmaはAffinityの直接の代替ではない
Figmaは、画面遷移を試すプロトタイプや、画面仕様を開発者へ渡す作業に強みがあります。
一方のAffinityは、画像、ベクター、紙面を精密に仕上げる制作アプリです。
両者は一部の図形編集で重なりますが、中心となる用途は異なります。
Webやアプリのチームでは、Figmaで画面と操作を設計し、必要な画像素材をAffinityで仕上げる分担が考えられます。
AdobeによるFigma買収は2023年12月に中止されました。
そのためFigmaはAdobeの製品群に統合されず、独立した製品として展開を続けています。
買収中止を「CanvaとAffinityの連携が自動的に強まる理由」とまでは言えません。
製品間の連携は、実際に利用できる書き出し形式や運用手順で評価すべきです。
誰にどの選択肢が向くのか
個人事業主や小規模な制作チーム
新たに画像編集、ベクター制作、冊子制作を始める場合、Affinityは初期のソフトウェア費用を抑えて試せる選択肢です。
ただし、取引先が編集可能なAdobe形式を指定している場合や、印刷会社が特定の入稿条件を設けている場合は、無料であることだけで決められません。
実際の納品データを使った互換性確認が先です。
企業のデザイン部門やマーケティング部門
企業では、制作機能よりも、誰がテンプレートを変更できるか、承認前の素材を公開しない仕組みをどう作るかが運用を左右します。
Affinityで素材を仕上げ、Canvaで展開する分担を試す場合も、担当者、承認者、保管場所、最終データの形式を先に決めます。
アプリの利用料金が下がっても、受け渡しのやり直しが増えれば総費用は下がりません。
Webやアプリの制作チーム
画面設計、プロトタイプ、開発者への引き渡しが中心なら、Figmaの役割はAffinityと置き換わりません。
詳しい比較は、内部記事のFigmaとAdobe XDの違いを比較した解説も参考になります。
印刷物と画面で同じブランドカラーを扱う場合は、ツール名だけでなく色空間と出力条件を揃える必要があります。
Web、アプリ、印刷でブランドカラーを揃える実務手順も確認してください。
移行前に行う小さな検証
全面移行の前に、実際の仕事を縮小した検証を行います。
次の順序なら、価格以外の問題を早い段階で見つけやすくなります。
- 対象を決める:SNS画像、チラシ、冊子、Web用素材など、移行候補の仕事を一つ選ぶ。
- 既存資産を棚卸しする:元データ、フォント、リンク画像、プラグイン、テンプレート、入稿仕様を一覧にする。
- 同じ成果物を再現する:Affinityで開き、文字組み、色、効果、画像解像度、ページ位置が変わらないか比べる。
- 受け渡しを試す:AffinityからCanvaへの展開、または取引先への納品までを一度通して確認する。
- 総費用を比べる:契約料に加え、移行、教育、修正、問い合わせ対応にかかる時間を含める。
- 使い分けを文書化する:どの仕事を移し、どの仕事でAdobeやFigmaを残すかを決める。
この検証で問題が出た場合、すべてを同時に移す必要はありません。
新規案件だけAffinityを使う、画像制作はAffinityで行いUI設計はFigmaに残すなど、工程ごとの併用も現実的です。
よくある疑問
Affinityは本当に無料ですか
Canvaは新しいAffinityについて、すべての利用者に無料で提供し続ける方針を公式に表明しています。
ただし、Affinityから利用する一部の高度なCanva AI機能は有料プラン向けです。
「Affinity本体の制作機能」と「接続する有料機能」を分け、契約時点の公式情報を確認してください。
Adobe Creative Cloudをすぐに解約できますか
既存データ、プラグイン、動画など他分野のアプリ連携、取引先の指定がある場合は、すぐに解約すると作業が止まる可能性があります。
代表的な案件で再現性と納品までの流れを確認し、Adobeが必要な工程だけを残す方法から検討します。
Figmaも不要になりますか
Webやアプリの画面設計、プロトタイプ、開発者への引き渡しにFigmaを使っているなら、Affinityの無料化だけを理由に外す必要はありません。
Affinityは素材制作、Figmaは画面と操作の設計というように、担当工程を分けて評価します。
買収と無料化から得られる実務上の結論
CanvaによるAffinity買収は、日常的なコンテンツ制作から精密な画像、ベクター、ページ制作まで、扱える範囲を広げる動きです。
無料化によって試しやすくなったことは確かですが、AdobeやFigmaからの全面移行が常に得になるとは限りません。
判断基準は製品の知名度や月額料金ではなく、必要な成果物を正しく作り、関係者へ渡し、修正し続けられるかです。
まず代表的な案件で互換性と受け渡しを確認し、その結果に応じて併用範囲を決める方法が、作業を止めずに選択肢を増やします。
参考資料
- CanvaによるAffinity買収発表
- 新しいAffinityの機能、無料提供、有料機能に関するCanva公式発表
- Canva Creative Operating System発表
- AdobeとFigmaによる買収契約終了の共同発表
- Figmaのプロトタイプ機能
- Figma Dev Modeの公式説明
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