サイトアイコン IT & ライフハックブログ|学びと実践のためのアイデア集

PDF、Word、PowerPoint、EPUBのアクセシビリティ実務ガイド|構造、読み上げ順、代替テキスト、書き出し

PDF - Portable Document Format acronym with marker, technology concept background

アクセシブルな文書とは、見た目が整った文書ではなく、見出し、本文、表、画像などの役割と順序を読み手が把握できる文書です。

画面を拡大する人、キーボードで操作する人、スクリーンリーダーや点字ディスプレイを使う人にも、同じ情報と操作手順が伝わる状態を目指します。

PDFだけを公開直前に修正するより、WordやPowerPointなどの元データから構造を整えたほうが、差し替えや再利用でも品質を保ちやすくなります。

最初に押さえる五つのポイント

文書形式ごとに優先したい作業
形式 元データで整えること 出力後に確かめること
Word 見出しスタイル、リスト、表、画像の説明 ナビゲーション、リンク、読み上げ順
PowerPoint スライドタイトル、プレースホルダー、オブジェクト順 スライドごとの読み上げ順と操作順
PDF 可能な限り元データ側で構造化 タグ、しおり、文字認識、フォーム、読み上げ順
EPUB 見出し、ランドマーク、目次、言語情報 閲覧環境での移動、拡大、読み上げ

文書構造は「意味」を伝える土台

文書構造とは、題名、章、節、段落、リスト、表などの役割と階層です。

文字を大きく太くしただけの見出しは、人には見出しに見えても、支援技術には通常の段落として伝わることがあります。

Wordでは見出しスタイル、PowerPointではタイトルや本文のプレースホルダー、EPUBでは見出し要素を使います。

長い文書では、見出しから作成した目次やPDFのしおりも用意します。設計の考え方は、目次、しおり、見出しを使った移動設計で詳しく確認できます。

代替テキストは画像の目的から決める

代替テキストは、画像が見えない場合にも、その画像が担う情報や機能を伝えるための説明です。

画像に写っているものをすべて列挙するのではなく、その文書で画像が何を伝えているかを基準に書きます。

画像の役割と伝え方
画像の役割 伝え方 例
情報を伝える画像 結論や要点を簡潔に説明する 申請の流れやグラフの主要な傾向
操作に使う画像 見た目ではなく操作結果を示す 「検索」「次のページ」
装飾画像 読み上げ対象から外す 区切りの模様や内容を持たない背景
複雑な図や数式 短い代替に加え、本文にも説明を置く 工程図の順序やグラフの結論

たとえば、五段階の申請図なら「本人確認、入力、確認、決済、完了の順に進む申請フロー」のように、図を使う目的が分かる説明にします。

図の中だけに結論、日程、連絡先を置かず、本文にも同じ要点を残してください。

判断に迷う場合は、代替テキストの目的別の書き方も参照できます。

読み上げ順と移動順を内容の流れに合わせる

視覚的な配置と、支援技術が取得する順序は一致するとは限りません。

二段組み、重なったテキストボックス、図の上に置いた注釈などがあると、説明より先に注釈が読まれることがあります。

スクリーンリーダーで確認する設計とテストを先に共有しておくと、担当者間で検証の目的を合わせやすくなります。

表、リンク、注釈は関係性を明示する

表には見出しと説明を付ける

表は、どの見出しとどの値が対応するかを伝える必要があります。

列見出しと行見出しを設定し、表の直前またはキャプションで目的を示します。複数段の見出しや結合セルが多い表は、単純な表に分けるか、本文の説明を併記します。

金額、件数、割合などは、見出しまたはセルに単位を明記します。

リンクだけを読んでも行き先が分かるようにする

「こちら」「詳細」のようなリンク名は、前後の文章から切り離すと行き先が分かりません。

「申請手順PDF」「募集要項」「問い合わせ先」のように、リンク先の内容を名前に含めます。

注釈には戻り道を用意する

脚注や参考文献へ移動できるだけでなく、本文の参照位置へ戻れるようにします。長い注釈は冒頭に短い要旨を置き、出典情報を画像ではなく文字で残します。

形式別の作成手順

WordからPDFへ書き出す場合

  1. 文書タイトルと見出しの階層を決め、見出しスタイルを適用する。
  2. 箇条書き、番号付きリスト、表、キャプションを各機能で作る。
  3. 画像の目的を分類し、必要な代替テキストまたは本文説明を付ける。
  4. 見出しから目次を作り、リンクが移動に使えるか確認する。
  5. 文書作成ソフトのアクセシビリティチェックを実行する。
  6. 構造情報を保つ設定でPDFへ書き出す。
  7. 書き出したPDFのタグ、しおり、リンク、読み上げ順を再確認する。

PowerPointを配布する場合

各スライドに内容を表すタイトルを付け、できるだけレイアウトのプレースホルダーを使います。

テキストボックスを重ねて見た目を整えると順序が分かりにくくなるため、オブジェクトの並びと読み上げ結果をスライドごとに確認します。

図には説明を付け、装飾だけの要素は読み上げ対象から外します。目次スライドや章の先頭から移動できるリンクも、長い資料では役立ちます。

既存PDFしか残っていない場合

最初に文字を選択してコピーできるか確認します。

スキャン画像だけのPDFは、そのままでは文字として検索や読み上げに使えないため、OCRで文字を取り出し、誤認識を修正してから見出し、表、読み上げ順を整えます。

作業の選び方は、PDFをテキスト化する方法とOCRの使い分けで確認できます。

すぐに再構成できない場合は、問い合わせ先と、テキスト版などの代替形式を入手する方法を同じ公開ページに示します。

EPUBを作る場合

章と節の見出し階層をそろえ、構造化された目次と本文の移動先を対応させます。

文書の言語、タイトル、著者などの情報も確認します。画像だけに説明を任せず、複雑な図や数式の要点は本文にも記述します。

最後に検証ツールを通し、複数の閲覧環境で目次移動、拡大、読み上げを試します。

自動チェックと手動検証の役割

自動チェックは、代替テキストの未設定、見出し階層の不整合、タグの欠落など、機械的に見つけられる問題の候補を探すのに向いています。

しかし、代替テキストが画像の目的を正しく説明しているか、読み上げた順序が自然か、リンク名だけで行き先を理解できるかまでは、人が内容を確かめる必要があります。

  1. 目次やしおりから各章へ移動する。
  2. 見出し一覧とリンク一覧を開き、名前と順序を確認する。
  3. 表をセル単位で移動し、対応する見出しが分かるか確かめる。
  4. 画像が必要な説明を伝え、装飾画像が不要に読まれないか確かめる。
  5. キーボードだけでリンクやフォームを操作する。
  6. 文字を拡大し、重なり、欠落、横方向の読みづらさがないか見る。

一つの閲覧ソフトで問題がなかったという結果だけで、すべての環境での読みやすさを保証することはできません。実際の配布形式と利用環境に近い条件を選んで検証します。

制作を個人技にしない運用

公開のたびに一から修正すると、担当者と納期によって品質が変わります。元データのテンプレート、作成時のルール、公開前チェックを共通化すると、修正の手戻りを減らしやすくなります。

工程ごとの確認内容
工程 確認すること
企画 配布形式、想定する読み方、代替形式の要否
原稿 見出し構成、図表の目的、脚注とリンク
制作 スタイル、代替テキスト、表、読み上げ順
書き出し タグや構造情報を保つ出力設定
検証 自動チェック、読み上げ、キーボード、拡大表示
公開後 版番号、更新日、旧版の扱い、問い合わせ窓口

警告を解消したかどうかだけで完了とせず、「必要な情報へ移動できる」「内容の関係を理解できる」「入力を完了できる」という読者の作業で判断します。

よくある問題と修正方法

公開前に見つけたい問題
問題 読者への影響 修正方法
太字と大きさだけで作った見出し 章へ移動しにくい 見出しスタイルを使う
文字が画像になったPDF 検索や読み上げに使えない OCR後に誤認識と構造を直す
空白で組んだ表 見出しと値の関係が伝わらない 表機能と見出しセルを使う
目的のない画像説明 情報が不足するか、不要な説明が増える 画像の役割から説明を決める
視覚配置と読み上げ順の不一致 説明の順序を追えない オブジェクト順やタグを並べ直す
色だけで示した注意 注意箇所を判別できないことがある 文字や記号でも意味を伝える
「こちら」だけのリンク リンク一覧で行き先が分からない リンク先の内容を名前にする

よくある質問

画像が多い広報誌は、すべてを長く説明する必要がありますか

すべての画像を長く説明する必要はありません。情報を持つ画像、操作に使う画像、装飾画像を分け、本文の理解に必要な情報だけを伝えます。

紙面の図だけに日程や連絡先がある場合は、その情報を本文にも置きます。

スキャンPDFをすぐに作り直せない場合はどうしますか

優先度の高いページから文字を取り出して確認し、並行して問い合わせ先と代替形式の提供方法を案内します。

OCRしただけでは見出しや表の関係までは戻らないため、文字認識後の構造確認が必要です。

アクセシビリティチェックで警告がなければ公開できますか

警告がないことは一つの確認結果にすぎません。読み上げ順、説明の分かりやすさ、キーボード操作などを手動で確かめてから公開します。

公開前チェックリスト

読みやすさは元データと運用から作る

文書アクセシビリティは、PDFのタグを最後に追加する作業だけではありません。

元データで意味と順序を整え、書き出し後に実際の読み方を確かめ、修正内容をテンプレートへ戻すところまでが一つの流れです。

まずは次に公開する一つの文書で、見出し、画像、表、読み上げ順、移動手段を確認してください。その結果を共通ルールにすれば、次の文書では同じ問題を繰り返しにくくなります。

この記事に関連する株式会社greedenの取り組み

文書のアクセシビリティは、公開前の点検だけでなく、テンプレートと運用ルールに組み込むことで続けやすくなります。株式会社greedenは、Webアクセシビリティの確認と改善を通じ、情報が必要な人へ届くWebづくりを支援しています。

モバイルバージョンを終了