情報分析と意思決定支援を手がけるRELXは、2025年上半期に売上高の基礎成長率7%、調整後営業利益の基礎成長率9%を公表しました。
売上高と調整後営業利益の伸びはいずれも二桁ではないため、数字を正確に捉える必要があります。
RELXは長期的な成長の背景として、コンテンツやデータに人工知能などの技術を組み合わせた分析、意思決定ツールへの事業構成の転換を挙げています。
したがって、生成AIを成長の唯一の原因とみなすのではなく、専門情報を実務で使える形にする製品戦略の一部として読むのが適切です。
2025年上半期決算が示したこと
RELXの2025年上半期決算発表では、次の二つの基礎成長率が示されています。
基礎成長率は、会社全体の金額を単純に比べるのではなく、継続する事業の伸びを捉えるためにRELXが用いる指標です。
| 指標 | 基礎成長率 | 読み方 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7%増 | 全社の継続的な売上の伸びを示す |
| 調整後営業利益 | 9%増 | 調整後の利益が売上高を上回るペースで伸びたことを示す |
この決算だけで、個別の生成AI製品が全社の成長をどれだけ生んだかまでは分かりません。
公式発表が示しているのは、RELXがデータ、コンテンツ、人工知能などを組み合わせた高付加価値の分析、意思決定ツールを全社で展開していることです。
法務向けのLexis+ with Protégé
現在の製品名はLexis+ with Protégéで、旧称はLexis+ AIです。
LexisNexisの公式製品ページによると、法務担当者向けに調査、文書作成、要約、分析を一つの環境で支援します。
支援する主な作業
- 法務調査:判例、法令、実務解説などを基に質問への回答と参照情報を示す。
- 文書作成:契約書、申立書、メモ、顧客向け文書などの初稿作成と修正を補助する。
- 文書分析:組織が用意した資料を読み、要約、論点整理、比較を支援する。
ここでの役割は、法務担当者の判断を置き換えることではありません。
出力された文書や引用は、適用される法令、案件の事情、依頼者の方針に照らして担当者が確認する必要があります。
公式情報だけでは、すべての利用者に共通する作業時間の短縮率やミス削減効果までは判断できません。
導入企業は、対象業務と確認工程をそろえたうえで自社の効果を測る必要があります。
研究向けのScienceDirect AI
ScienceDirect AIは、学術論文や書籍の情報を探し、読み比べる作業を支援する機能群です。
RELXの2025年上半期説明では、同期間にScienceDirect AIを立ち上げたことが報告されています。
ElsevierのScienceDirect AIサポートページでは、次の三つの機能が案内されています。
- Ask ScienceDirect AI:自然言語で質問し、関連する全文情報を基に要約と資料ごとの概要を得る。
- Reading Assistant:一つの論文や章について質問し、本文の該当箇所を手掛かりに理解を進める。
- Compare Experiments:選んだ研究論文から目的、方法、材料、結果、結論を整理して比較する。
検索や要約は先行研究レビューを補助しますが、文献の評価や研究上の判断まで任せるものではありません。
研究開発の所要時間への効果は、対象分野、検索範囲、確認工程によって変わります。
Elsevierは、各回答を人が個別に編集しているわけではなく、誤りが入る可能性があると説明しています。
研究者は出典箇所を読み、他の信頼できる資料と照合し、必要に応じて専門家の確認を受ける必要があります。
二つの製品に共通する業務設計
法務と研究では対象資料が異なりますが、専門情報を根拠に作業を支援し、最終判断を専門家に残す点は共通しています。
| 項目 | Lexis+ with Protégé | ScienceDirect AI |
|---|---|---|
| 主な利用者 | 弁護士、法務担当者 | 研究者、研究開発担当者 |
| 主な資料 | 法令、判例、実務解説、組織内文書 | 学術論文、書籍、実験情報 |
| 支援する作業 | 調査、初稿作成、要約、分析 | 検索、読解、要約、実験比較 |
| 人が確認する点 | 引用の有効性、法的判断、案件への適合 | 出典、データ、研究条件、結論の妥当性 |
生成AIとは、入力された指示や資料を基に文章や要約などを作る技術です。
もっとも、専門分野では文章が自然であることと内容が正しいことは同じではありません。
信頼できる資料への接続、出典の追跡、人の確認を業務の中に組み込むことで、便利さと説明責任を両立しやすくなります。
企業が導入前に決める五つの項目
製品の機能を比較する前に、どの作業を支援させ、誰が結果に責任を持つかを決めます。
- 対象業務:検索、要約、初稿作成、比較など、任せる範囲を具体的にする。
- 入力情報:個人情報、機密情報、顧客資料を入力できる条件と禁止事項を決める。
- 根拠の確認:出典をたどれるか、原文と照合できるかを確認する。
- 承認責任:誰が出力を確認し、どの基準で利用可否を決めるかを定める。
- 効果測定:所要時間だけでなく、修正量、見落とし、再作業も記録する。
導入手順を具体化したい場合は、関連記事の生成AIを業務に入れる前に決めるべきことで、業務フロー、確認責任、セキュリティ、効果測定の整理方法を確認できます。
入力データの扱いについては、生成AIと個人情報の実務ガイドも参考になります。
RELXの事例から得られる実務上の示唆
RELXの事例から読み取れるのは、生成AIを単独で導入するのではなく、専門的なコンテンツやデータ、既存の業務手順と結び付けている点です。
一方、全社の成長率だけで個別製品の投資効果を断定することはできません。
企業が自社で再現すべきなのは特定の数字ではなく、対象業務を絞り、根拠を確認できる状態を作り、人の承認と効果測定を継続する運用です。
この記事に関連する株式会社greedenの取り組み
株式会社greedenは、生成AIを用いた施策について、ツール選定から業務フロー改善、社内勉強会、定着支援まで伴走します。専門職の判断を残しながら、現場で使い続けられる仕組みを一緒に設計します。

