障害者雇用を進めても、社内ポータルや業務システムを読めない、操作できない状態では、社員が担当業務に参加できる範囲は狭まります。
採用ページだけでなく、入社手続き、勤怠管理、研修、日々の連絡までを通して使えるデジタル環境が必要です。
Webアクセシビリティとは、障害の有無や利用環境にかかわらず、Web上の情報を取得し、機能を操作できる状態を目指す考え方です。
この記事では、障害者雇用との関係を職場の具体的な場面に置き換え、企業が着手する順序まで説明します。
障害者雇用とWebアクセシビリティの関係
職場では、情報を読むこととシステムを操作することが業務の一部になっています。
そのため、デジタル上の障壁は単なる使いにくさではなく、申請、報告、学習、同僚との連絡といった仕事の遂行を妨げることがあります。
たとえば、画面上の文字や操作項目を音声などで伝えるスクリーンリーダーを使う社員にとって、見出しの構造や入力欄の名前が正しく設定されていることは、画面の内容を理解する手がかりです。
マウスを使いにくい社員にとっては、キーボードだけで操作でき、現在選択している場所が見えることが欠かせません。
Webアクセシビリティの基本と最初の改善項目を押さえると、こうした困りごとを設計や実装の確認事項へ置き換えやすくなります。
職場で起きやすいデジタル上の障壁
確認対象は、一般公開しているWebサイトだけではありません。
社員が仕事で使う画面や教材も、利用できなければ業務上の障壁になります。
| デジタル接点 | 起きやすい障壁 | 確認したい対応 |
|---|---|---|
| 採用・入社手続き | 入力欄の説明やエラーの場所が伝わらない | ラベルを明示し、修正方法を文章で示す |
| 社内ポータル・業務マニュアル | 見出しの順序が不自然で、画像の内容を読み取れない | 見出しを階層化し、情報を持つ画像に代替テキストを付ける |
| 勤怠・申請システム | マウスを使わないと操作できず、選択位置も見えない | キーボード操作とフォーカス表示を確認する |
| 研修動画 | 音声だけで説明され、内容を確認する別の手段がない | 正確な字幕や必要に応じたテキスト資料を用意する |
| 進捗・警告表示 | 状態の違いを色だけで示している | 文字、記号、形などを併用して意味を伝える |
同じ障害名でも、使う支援技術や業務内容によって困る場面は異なります。
一覧をそのまま当てはめるだけでなく、本人が担当する仕事と利用環境を確認する必要があります。
合理的配慮と事前の環境整備を分けて考える
合理的配慮は、障害のある社員が職場で直面する支障について、本人との対話を通じて必要な調整を検討する考え方です。
雇用分野では、厚生労働省が障害者雇用促進法に基づく差別禁止と合理的配慮を案内しており、事業主には過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。
Webアクセシビリティの整備は、社員から申出がある前に、共通して起こり得る障壁を減らす取り組みです。
一方、合理的配慮は個別の事情に応じた調整であるため、アクセシブルなシステムを導入しただけで個別対応が不要になるわけではありません。
制度の対象や判断は個別の状況で変わります。
一般的な考え方は障害者差別解消法と合理的配慮の解説も参考にし、実際の雇用対応では担当部門や専門家に確認してください。
Webアクセシビリティの基準
WCAGは、Webコンテンツを障害のある人が利用しやすくする方法を示す国際的な技術標準です。
W3CのWCAG 2の概要では、知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢という四つの原則のもとに達成基準が整理されています。
日本では、Webコンテンツのアクセシビリティに関する規格としてJIS X 8341-3:2016が参照されています。
初めて取り組む担当者は、デジタル庁のウェブアクセシビリティ導入ガイドブックを併用すると、規格を調達、制作、運用の作業へ結び付けやすくなります。
ただし、基準への対応状況だけで、社員が実務を最後まで進められるかは判断できません。
自動チェックに加えて、キーボード操作、読み上げ順序、入力エラーの伝わり方などを人が確認し、可能であれば実際の利用環境でも試します。
企業が取り組む順序
すべての画面を一度に直そうとすると、対象範囲も優先順位も曖昧になります。
業務への影響が大きい接点から段階的に進めます。
- デジタル接点を洗い出す:採用から入社後の業務まで、社員が使うWebサイト、社内システム、文書、動画を一覧にします。
- 業務上の支障を確認する:障害名だけで判断せず、どの作業を、どの端末や支援技術で行い、どこで止まるのかを本人と確認します。
- 優先順位を決める:勤怠、連絡、必須研修など、利用頻度と業務への影響が大きい機能を先に扱います。
- 要件に落とし込む:キーボード操作、見出し、ラベル、代替テキスト、字幕など、必要な状態を設計や調達の条件として明文化します。
- 複数の方法で検証する:自動チェックだけに頼らず、人による操作確認や支援技術での確認を組み合わせます。
- 更新後も確認する:新機能やコンテンツ追加で障壁が戻らないよう、公開前の確認と相談窓口を運用に組み込みます。
発注、設計、実装、運用の各段階での分担は、Webアクセシビリティを実務に組み込むチェックポイントで詳しく確認できます。
部門別の確認ポイント
- 人事部門:募集要項、応募フォーム、入社手続き、必須研修を一連の流れとして確認し、困りごとを相談できる連絡先を示します。
- 管理・調達部門:対象画面、目標とする基準、試験方法、改修後の受入条件を発注時に明文化します。
- デザイン・開発部門:意味のあるHTML構造、キーボード操作、フォーカス表示、入力支援、色に依存しない情報提示を設計とレビューに含めます。
- 運用部門:画像、PDF、動画、フォームを追加するときの確認手順を決め、利用者から届いた問題を改修計画へ戻します。
一つの部門だけに任せると、採用ページは改善しても入社後の業務システムで作業が止まるといった分断が生じます。
人事、情報システム、調達、現場の管理者が対象範囲と判断基準を共有することが、継続的な改善の土台になります。
働き続けられるデジタル環境へ
障害者雇用を支えるWebアクセシビリティは、情報を読めることだけでなく、必要な手続きを終え、研修を受け、同僚と同じ業務の流れに参加できる状態を整える取り組みです。
まずは業務が止まる箇所を本人と確認し、影響の大きいデジタル接点から改善してください。
共通の障壁を事前に減らすことと、個別の合理的配慮を対話で検討することは、どちらか一方で代替できません。
設計、検証、運用をつなぎ、変更のたびに確認を重ねることで、多様な働き方を支える環境を維持できます。
この記事に関連する株式会社greedenの取り組み
社内ポータルや業務システムは、働くための入口です。株式会社greedenは、Webアクセシビリティチェックサービスを提供しています。障害のある社員が情報取得や操作でつまずく箇所を把握し、改善の優先順位を決める第一歩として活用できます。

