WCAG 2.2の達成基準3.1.3「一般的ではない用語」は、慣用句や業界用語などを特定の意味で使うときに、その定義を読者が確認できる仕組みを求めています。
この達成基準はレベルAAAですが、専門家だけが読む文書に限らず、一般の読者へ専門情報を伝えるページでも役立つ考え方です。
対象となるのは、単に難しそうな単語のすべてではありません。
その文脈を理解するために、読者が特定の定義を知る必要がある単語や語句を見つけ、意味へたどり着けるようにします。
WCAG全体の構成を先に確認したい場合は、内部記事「WCAG 2.2とは何か」も参照してください。
達成基準3.1.3が求める内容
WCAG 2.2日本語訳の達成基準3.1.3では、一般的ではない用法や限定された用法で使われる単語や語句について、明確な定義を特定できる仕組みを利用可能にすることが示されています。
ここでいう仕組みには、本文中の説明、用語集へのリンク、辞書を検索する機能などが含まれます。
- 一般的ではない用語
- 一般にはなじみが薄く、そのままでは読者が意味を判断しにくい単語や語句です。
- 限定された用法
- 一般にも使われる語を、特定の分野や文書の中だけで狭い意味に定めて使うことです。
- 慣用句
- 個々の単語を文字どおりに読んでも、語句全体の意味を導きにくい表現です。
- 業界用語
- 特定の職業や技術分野で、一般とは異なる意味や専門的な意味で使われる語です。
たとえば「さじを投げる」は、文字どおりの動作ではなく「あきらめる」という意味で使われる慣用句です。
「シングルサインオン」は技術分野では広く使われますが、一般向けのページでは「一度の認証で複数のサービスを利用できる仕組み」と補うほうが理解しやすくなります。
どの語句に説明が必要か
説明の要否は、語句の難しさだけでは決まりません。
想定読者と文脈を基準に、特定の定義を知らなければ内容を誤解するかどうかを判断します。
| 表現の種類 | 確認する点 | 対応例 |
|---|---|---|
| 慣用句 | 文字どおりの意味から意図を判断できるか | 語句の直後に意味を括弧で補う |
| 専門用語 | 想定読者がその分野の知識を持っているか | 最初の使用箇所で平易に定義する |
| 限定された用法 | 同じ語に複数の意味があり、特定の意味だけを使っているか | このページでの意味を明記する |
| ページ内で意味が変わる語 | 出現箇所ごとに異なる定義が必要か | それぞれの箇所で文脈に合う定義を示す |
W3Cの達成基準3.1.3解説は、ページ内で意味が一つに定まる場合と、同じ語が異なる意味で使われる場合を分けています。
意味が一つなら最初の出現箇所に定義を置く方法を選べますが、意味が変わるなら各箇所で対応する定義を示します。
実装方法の選び方
本文中に見える定義を書く
対象語が少ないページでは、語句の直前か直後に定義を書く方法が最も追いやすくなります。
定義が本文に見えているため、読者は別の場所へ移動せずに意味を確認できます。
<p>
<dfn>シングルサインオン</dfn>(一度の認証で複数のサービスを利用できる仕組み)を利用できます。
</p>
dfn要素は、その箇所が用語を定義していることを示します。
ただし、要素を付けるだけでは意味は伝わらないため、定義の文章も隣接させます。
ページ内の用語集へリンクする
専門用語が多いページでは、用語集をまとめると本文の流れを保ちやすくなります。
対象語から対応する定義へ直接移動できるリンクを設け、用語と説明は説明リストで関連付けます。
<p>
<a href="#term-sso">シングルサインオンの定義</a>を確認してください。
</p>
<h2 id="glossary">用語集</h2>
<dl>
<dt id="term-sso">シングルサインオン</dt>
<dd>一度の認証で複数のサービスを利用できる仕組み。</dd>
</dl>
用語集を別ページに置く場合も、リンク先のページ名だけではなく、何の定義へ移動するのかが分かるリンク文にします。
辞書や外部資料へ案内するときは、本文の文脈と同じ定義が示されているかも確認します。
title属性だけに説明を置かない
title属性の内容は、一般にポインターを重ねたときのツールチップとして表示されます。
W3Cのアクセシブルな名前と説明に関する解説は、この表示が見つけにくく、ポインティングデバイスを使わない視覚利用者にはアクセスできないと説明しています。
したがって、用語の意味をtitle属性だけに入れる方法は避け、本文に見える定義か、キーボードでも利用できる明確なリンクを使います。
確認は人による内容レビューを中心にする
達成基準3.1.3では、どの語句が想定読者にとって一般的ではないか、その定義が文脈に合っているかを判断する必要があります。
この意味の判断は、HTML要素の有無を調べるだけでは完了しません。
- ページの想定読者と、読者に前提としてよい知識を確認します。
- 慣用句、専門用語、略語、独自の言い換え、限定された意味で使う語を抽出します。
- 対象語ごとに、本文中の定義か定義へのリンクがあるかを確認します。
- リンク先の定義が対象箇所の意味と一致し、キーボード操作でも到達できるかを確認します。
- 同じ語を複数の意味で使っている場合は、出現箇所ごとに適切な定義を特定できるかを確認します。
- 専門知識を持たないレビュー担当者にも読んでもらい、説明なしでは理解しにくい語を追加で洗い出します。
自動検査ツールは、リンク切れやマークアップ上の問題を見つける補助にはなります。
しかし、W3Cのアクセシビリティ評価ツールの選び方が示すとおり、ツールだけですべてのアクセシビリティ要件を判断することはできず、人の判断が必要です。
検査ツールの役割を整理したい場合は、内部記事「Webアクセシビリティチェックツールの使い方」も参考になります。
用語の説明が支える読者
特定の定義へすぐ到達できる構成は、認知、言語、学習に関する障害がある人や、拡大表示によって前後の文脈を追いにくい人の理解を助けます。
同時に、初めてその分野を学ぶ人、母語が異なる人、検索から途中の節へ来た人にも内容が伝わりやすくなります。
用語の定義だけでなく、見出し、要約、平易な表現まで整える場合は、内部記事「見出し、要約、やさしい日本語の整え方」を参照してください。
実装前後のチェックリスト
- 想定読者にとって説明が必要な語句を洗い出したか
- 用語の定義が本文中に見えるか、明確なリンクで到達できるか
- リンク先に複数の定義がある場合、該当する意味を特定できるか
- 同じ語を異なる意味で使う箇所を、一つの定義で済ませていないか
title属性やポインター操作だけに説明を依存していないか- 自動検査の結果だけでなく、人が内容と文脈を確認したか
参考資料
- WCAG 2.2日本語訳:達成基準3.1.3 一般的ではない用語
- W3C:Understanding Success Criterion 3.1.3
- W3C Technique G112:本文中に定義を置く方法
- W3C Technique G62:用語集を提供する方法
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