「2025年問題」は、2025年だけで終わる一時的な出来事ではありません。少子高齢化を背景とした働き手の不足と、社会を支えるITシステムの維持・更新という課題が重なる節目として捉えると、問題の全体像が見えやすくなります。
IT業界への影響は、大きく分けて「人材と技能継承」と「システムと利用環境」の二つです。両者は別々の問題ではなく、保守を担う人が減ればシステムの更新が難しくなり、使いにくいサービスが残ればデジタル化の恩恵が届きにくくなるというように、互いに関係しています。
IT業界から見た二つの2025年問題
| 観点 | 主な課題 | 見直したいこと |
|---|---|---|
| 人材と技能継承 | 熟練技術者が持つ知識や経験が、次の担当者に十分伝わらない | 手順の文書化、複数人での情報共有、計画的な人材育成 |
| システムと利用環境 | 古い仕組みの保守が難しくなり、利用者によって使いやすさに差が生まれる | 段階的な更新、運用体制の確認、アクセシビリティへの配慮 |
ここからは、それぞれの課題がなぜ起こるのか、企業や組織がどこから見直せばよいのかを順に整理します。
課題1:IT人材の不足と技能継承
熟練したエンジニアが現場を離れると、人数が減るだけでなく、長年の運用で身につけた判断基準や障害対応の経験も失われるおそれがあります。設計書に書かれていない作業や、特定の担当者だけが把握している設定が多いほど、引き継ぎは難しくなります。
一方で、AIやデータサイエンスなどの新しい分野では、基礎知識に加えて実務経験も必要です。採用だけで不足を補おうとするのではなく、既存の知識を残しながら次の担い手を育てる視点が欠かせません。
技能継承では、次のような取り組みが出発点になります。
- 日常の運用手順と、例外が起きたときの判断を分けて記録する
- 重要な作業を一人に任せきりにせず、複数人が確認できる状態にする
- 古い技術の保守と新しい技術の習得について、優先順位を決める
- 引き継ぎ後に実際の作業を試し、不足している情報を補う
課題2:ITシステムの老朽化と保守負担
長く使われてきたシステムの中には、古いプログラム言語や設計方式を前提とし、限られた技術者で保守しているものがあります。このような、現在の業務に欠かせない一方で更新や連携が難しくなった仕組みは、一般に「レガシーシステム」と呼ばれます。
ただし、古いシステムをすべて一度に新しくすればよいとは限りません。業務への影響、他のシステムとのつながり、保守できる人員を確認し、「そのまま維持する部分」「改善する部分」「置き換える部分」を分けて考える必要があります。
まずは、利用中のシステムと担当者を一覧にし、障害時の連絡先、データの受け渡し、更新できない理由を整理します。全体像が見えれば、影響の大きい箇所から段階的に対策を立てやすくなります。
DXを進めるほどデジタルデバイドへの配慮が必要になる
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単に紙の手続きをオンラインに置き換えることではなく、デジタル技術を使って業務やサービスの仕組みそのものを改善する考え方です。基本から検討したい場合は、DXの基本と進め方を解説した記事も参考になります。
ここで見落とせないのが、デジタルデバイドです。これは、機器の有無だけでなく、年齢、障害、経験、利用環境などによって、デジタルサービスを使える人と使いにくい人の間に生じる差を指します。
手続きや問い合わせをオンラインだけに集約すると、操作に慣れていない人や、画面を見たり細かな操作をしたりすることが難しい人が利用しにくくなる場合があります。DXの成果は、機能を増やしたかどうかだけでなく、必要な人が迷わず目的を達成できるかという視点でも確かめることが大切です。
ウェブアクセシビリティを利用環境の土台にする
ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害、利用する機器にかかわらず、できるだけ多くの人がウェブ上の情報やサービスを利用できるようにする考え方です。高齢化とデジタル化が同時に進む状況では、付加機能ではなく、サービス設計の土台として扱う必要があります。
例えば、見出しを内容に合った順序で使う、リンクの行き先を文言から分かるようにする、画像の内容を代替テキストで伝える、キーボードでも操作できるようにする、といった配慮があります。こうした工夫は、特定の人だけのためではなく、初めてサービスを使う人や、慣れない環境からアクセスする人の分かりやすさにもつながります。
関連する法令やガイドラインへの対応が必要な場合は、組織やサービスの種類によって求められる範囲を確認したうえで、個別の画面だけでなく、申し込みや問い合わせを完了するまでの流れ全体を点検することが重要です。
企業が優先して確認したいこと
人材、システム、利用者の課題を同時に解決しようとすると、計画が大きくなりすぎます。まずは現状を把握し、影響の大きいところから順に改善します。
- 担当者と知識を把握する:誰が何を知っているか、引き継ぎが必要な作業は何かを整理します。
- 重要なシステムを特定する:停止したときに業務や利用者への影響が大きい仕組みから確認します。
- 利用者のつまずきを調べる:問い合わせ内容や操作の流れを見て、分かりにくい箇所を洗い出します。
- 小さく改善して検証する:文書化、画面改善、段階的な更新を行い、実際に使える状態になったか確かめます。
まとめ:2025年問題を継続的な改善のきっかけに
IT業界にとっての2025年問題は、「人材が足りない」「システムが古い」という二つの話だけではありません。知識を次の担当者へ渡し、維持できる仕組みに整え、誰もが利用しやすいサービスへ改善するという一連の課題です。
重要なのは、2025年という年を過ぎたかどうかではなく、自社の人材、システム、利用環境に残る弱点を把握し、優先順位をつけて改善を続けることです。
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