略語とは、長い語句や名称を短く表したものです。
WCAGやJISのような表記は文章を簡潔にしますが、意味を知らない読者には理解を妨げる原因にもなります。
Webアクセシビリティの観点では、略語をなくすことではなく、必要なときに正式名称や意味を確認できるようにすることが大切です。
最も分かりやすい基本は、初出箇所で正式名称を示し、その後に略語を使う書き方です。
JIS X 8341-3とWCAGにおける略語
JIS X 8341-3は、日本のWebコンテンツのアクセシビリティに関する規格で、WCAGの考え方に基づいています。
WCAGは「Web Content Accessibility Guidelines」の略称です。
略語に関する考え方は、短い表記だけを読者に示すのではなく、正式名称や意味を確認できるようにすることです。
初出で「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)」と書けば、略語と正式名称の関係を本文だけで理解できます。
ただし、特定の属性やツールチップを付けるだけで対応が終わるわけではありません。
読者が本文の流れの中で意味を理解できるかを起点に、表示方法と実装を選びます。
略語が読みにくさを生む場面
略語の問題は文字数の短さではなく、読者が元の語句や意味を推測しなければならない点にあります。
同じ分野に詳しい人には通じる表記でも、初めて読む人には別の言葉と同じです。
- 正式名称を知らないと、話題の対象を特定できない
- 同じ文字列に複数の意味があり、文脈だけでは判断しにくい
- 読み上げ方によっては、文字の区切りや意味を捉えにくい
- 画像内にしか略語がなく、代替となる説明がない
略語に加えて専門用語も多い文章では、難解な用語を伝える方法も合わせて確認すると、説明の粒度をそろえやすくなります。
初出から再登場までの書き方
- 初出では正式名称を先に書く
「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)」のように、正式名称と略語を一続きで示します。 - 同じページ内では略語を使う
意味を示した後は、WCAGと書くだけで文章を簡潔に保てます。 - 長いページでは必要に応じて説明を添える
初出箇所から離れた節や、単独で読まれやすい箇所では、短い説明を再掲すると理解しやすくなります。 - 正式名称だけで伝わらない場合は意味も書く
英語の正式名称を示しても役割が分かりにくい専門語には、短い日本語の説明を添えます。
場面別に選ぶ略語の伝え方
| 場面 | 推奨する対応 | 避けたい対応 |
|---|---|---|
| 本文での初出 | 正式名称と略語を同じ箇所に表示する | 説明せず略語だけを置く |
| 同じページでの再登場 | 説明済みの略語を使い、文章を簡潔にする | 一文ごとに正式名称を繰り返す |
| ツールチップ | 本文の説明を残したうえで、補足として使う | マウスを重ねる操作だけで意味を示す |
| 読み上げ | 実際の読み上げ環境で、意味が伝わるか確認する | すべての環境で同じ読み方になると決めつける |
| 画像内の略語 | 画像の目的に応じて、周辺本文か代替テキストで意味を伝える | 画像内にしか説明を置かない |
ツールチップは補助として使う
略語にマウスを重ねたときだけ正式名称が表示される設計では、キーボード操作やタッチ操作を使う読者が説明を確認できない場合があります。
そのため、正式名称は本文中に表示し、ツールチップは追加の補足として扱うほうが確実です。
略語の意味を本文に書けない事情がある場合は、用語集や説明ページへのリンクも選択肢になります。
リンク文は「用語集はこちら」ではなく、何を確認できるかが分かる表現にします。
読み上げで確認するポイント
スクリーンリーダーは、画面上の情報を音声や点字で伝える支援技術です。
略語を一つの単語として読むか、一文字ずつ読むかは、表記や利用環境によって変わる可能性があります。
特定の略語に一律の読み方を決めるより、代表的な環境で実際に確認し、意味が伝わらない箇所の文章を直すほうが実務的です。
ARIA属性の追加だけに頼らず、まず見えている本文で正式名称と意味を伝えます。
- 略語と周辺の文章を続けて聞いて意味を理解できるか
- 一文字ずつ読む場合でも、文字のまとまりを判断できるか
- 正式名称を示した直後に略語があり、両者の関係が分かるか
- キーボードだけでも補足説明へ到達できるか
支援技術の役割や確認方法は、スクリーンリーダーの仕組みと実装ポイントで詳しく解説しています。
画像内の略語と代替テキスト
図やバナーに略語が含まれ、その略語が画像の意味を理解するために必要なら、周辺本文または代替テキストで意味を伝えます。
画像内の文字を機械的にすべて書き写すのではなく、画像が担う情報と略語の役割を基準に内容を決めます。
周辺本文ですでに正式名称と意味を説明している場合は、同じ説明を重ねると読み上げが冗長になることがあります。
画像が情報を伝えるものか装飾かを見分けたうえで、代替テキストの基本と書き方に沿って整えます。
公開前の確認項目
- ページ内の略語を洗い出したか
- 初出で正式名称または意味を示したか
- 同じ略語を別の意味で使っていないか
- ツールチップやマウス操作だけに説明を任せていないか
- 読み上げたときも略語と正式名称の関係が伝わるか
- 画像内の略語に必要な説明があるか
- リンク文だけを読んでも移動先の内容が分かるか
略語は短さより伝わり方で判断する
略語は、読者が意味を確認できる状態で使えば、文章を簡潔にする有効な表記です。
初出で正式名称を示し、ツールチップを補助にとどめ、読み上げと代替テキストを確認すれば、専門的な内容でも理解の入口を保てます。
略語の扱いは、支援技術を利用する人だけの課題ではありません。
分野に詳しくない読者、高齢の読者、短時間で情報を確認したい読者にも伝わる文章を作るための基本です。
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