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JIS X 8341-3:2016の「十分な時間」とは?2.2.1〜2.2.3の要件と実装例

フォームの入力期限、一定時間で切れるセッション、自動で切り替わるカルーセルは、素早く操作できる利用者だけを前提にすると使えない人を生みます。

JIS X 8341-3:2016のガイドライン2.2「十分な時間」は、利用者がコンテンツを読み、操作を終えるための時間を確保する考え方です。

この記事では、達成基準2.2.1から2.2.3までの違いを整理し、実装と確認の要点を具体的に説明します。

JIS X 8341-3:2016における「十分な時間」

「十分な時間」とは、読む速さ、入力の速さ、支援技術の操作に必要な時間が利用者ごとに異なることを踏まえ、時間制限や自動的な変化を調整できるようにする考え方です。

JIS X 8341-3:2016の規格本文はISO/IEC 40500:2012の一致規格であり、技術的な内容はWCAG 2.0と同じです。

そのため、各達成基準の意図や実装方法を調べるときは、JISの規格票とあわせてWCAG 2.0の関連文書も参照できます。

達成基準 適合レベル 扱う問題 対応の方向
2.2.1 タイミング調整可能 A コンテンツが設ける時間制限 解除、調整、延長のいずれかを可能にする
2.2.2 一時停止、停止、非表示 A 動く情報や自動更新される情報 利用者が動きや更新を制御できるようにする
2.2.3 タイミング非依存 AAA 時間内の操作を活動の成立条件にすること 原則として時間に依存しない活動にする

適合レベルAAを目標にする場合、レベルAの2.2.1と2.2.2は対象になります。

2.2.3はレベルAAAですが、時間制限を設ける必要がないサービスでは設計段階から取り入れる価値があります。

2.2.1 タイミング調整可能

達成基準2.2.1は、コンテンツが設定する時間制限について、利用者が操作を完了できる手段を求めます。

時間制限ごとに、次のいずれかを満たす必要があります。

たとえば入力フォームのセッションを終了する必要がある場合は、終了直前に「セッションを延長する」操作を提示します。

警告は画面に表示するだけでなく、キーボードで選択でき、スクリーンリーダーにも変化が伝わるように実装します。

利用者の入力中だけタイマーを止める方法は中断を減らせますが、それだけで2.2.1を満たすとは限りません。

解除、調整、延長、または例外のどれに該当するかを時間制限ごとに確認する必要があります。

実装時に確認する項目

2.2.2 一時停止、停止、非表示

達成基準2.2.2は、ページ上で自動的に動いたり更新されたりする情報が、読む作業や操作を妨げないようにする基準です。

対象は「動く、点滅する、スクロールする情報」と「自動更新される情報」の二つに分かれ、条件が異なります。

情報の種類 対象になる条件 必要な操作
動く、点滅する、スクロールする情報 自動で始まり、5秒を超えて続き、ほかのコンテンツと並行して表示される 一時停止、停止、非表示のいずれか
自動更新される情報 自動で始まり、ほかのコンテンツと並行して表示される 一時停止、停止、非表示、または更新頻度の調整

カルーセル、スクロールするニュース、アニメーション、定期的に内容が変わる通知欄などが確認対象になります。

自動更新される情報には5秒の例外がないため、短い間隔で更新が終わる場合でも条件を確認します。

一時停止の操作は、動く領域の近くなど見つけやすい場所に置き、ボタンの目的を文字で判別できるようにします。

フォーカスが当たっている間だけ停止し、フォーカスを外すとすぐ動き出す仕様では、ページのほかの部分を操作しながら止めておけません。

ここでいう「点滅」と、発作の危険を扱う「閃光」は区別します。

閃光はガイドライン2.3の対象であり、停止ボタンを付けるだけでは十分ではありません。

音声の自動再生も別の達成基準で扱われるため、2.2.2だけで適否を判断しないようにします。

2.2.3 タイミング非依存

達成基準2.2.3は、非インタラクティブな同期したメディアとリアルタイムの出来事を除き、時間が活動の不可欠な条件にならないことを求めるレベルAAAの基準です。

これは、ページの挙動を予測可能にする基準ではありません。

利用者が制限時間を延ばせるようにする2.2.1よりも一歩進め、可能な活動は時間制限そのものに依存させない考え方です。

たとえばオンラインテストでは、回答の速さを得点条件にしない構成を検討できます。

ゲームでは、リアルタイムで競う方式だけでなく、交互に操作する方式にできるかを検討します。

リアルタイム性がサービスの目的そのものである場合は例外になり得ますが、便利だからという理由だけで時間制限を不可欠とみなすことはできません。

「十分な時間」の実装手順

  1. 時間に関係する挙動を洗い出す:セッション切れ、入力期限、自動遷移、カルーセル、自動更新などを画面単位で確認する。
  2. 達成基準を対応付ける:時間制限は2.2.1、動きや自動更新は2.2.2、時間依存そのものは2.2.3として分ける。
  3. 例外の根拠を確認する:リアルタイム性や時間制限が本当に活動の成立条件かを、仕様として記録する。
  4. 操作手段を実装する:解除、調整、延長、一時停止、停止、非表示など、該当する手段を提供する。
  5. 実際の操作で確かめる:キーボードと支援技術を含む操作で、警告の通知、フォーカス移動、入力内容の保持を確認する。

時間制限の確認では、タイマーの有無だけを調べても不十分です。

警告に気付けるか、操作が間に合うか、延長後に作業を続けられるかまでを一つの流れとして試します。

JIS X 8341-3:2016を参照するときの注意

この記事はJIS X 8341-3:2016を対象にしています。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)は、ISO/IEC 40500が2025年にWCAG 2.2と同じ内容へ改正されたことを受け、JIS X 8341-3の改正を検討しています。

新規案件や適合方針の更新では、参照するJISの版と組織が目標にするWCAGの版を確認してください。

参考資料

まとめ

達成基準2.2.1は時間制限の解除、調整、延長を、2.2.2は動きや自動更新の制御を扱います。

レベルAAAの2.2.3は、活動を原則として時間に依存させない基準です。

三つを混同せず、時間制限ごとに必要な操作と例外の根拠を確認することで、読む速さや操作速度が異なる利用者も作業を続けやすくなります。


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